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【ボート】苦難を乗り越えて…10年ぶりにSGへ帰ってきた吉川昭男

 「ボート記者コラム・仕事 賭け事 独り言」

 17日から平和島で今年のSG第1弾となるボートレースクラシックが始まる。その出場メンバーに、10年ぶりにSGの舞台に帰って来た吉川昭男(47)=70期・滋賀・A1=がいる。

 「10年ひと昔」。吉川が最後にSGの舞台に立ったのはちょうど10年前。今回と同じ平和島のクラシック。ただ、この10年は長い長い戦いでもあった。

 ボート選手として脂が乗ってきた今から9年前。突然の病に冒された。「潰瘍性大腸炎」。完治が難しく、難病に指定されている病気だ。「ほんまにしんどくて引退も考えた」。そんな時だった。「ずっと僕を応援してくれていた看護助手の夛田(ただ)美穂さんがステージ4の末期がんだと言う知らせが来たんです」。苦しい状況でも夛田さんは、吉川を励まし続けた。吉川は「こんなに苦しんでいる人が一生懸命応援してくれているのに、自分が後ろ向きになってどうする」。そこから前向きに取り組むようになって病気を克服した。

 しかし1年後、夛田さんは他界。彼女は病床で「こんなに仲良くなれたのに、いっぱい応援してあげたかった」と話していたという。後に旦那さんからその話を聞かされ吉川は涙した。

 いろいろな苦境を乗り越えて勝ち取ったSGの出場権だったが、今年に入り、さらなる悲劇が、吉川を襲った。ひとつは一緒にSGに行くはずだった同支部・川北浩貴の大けが。さらに追い打ちをかけるように、昔から同世代として仲良くしていた松本勝也さんがレース中に事故死。そして自分をボートの世界に導いてくれた父親が交通事故で他界。「正直、もう身も心もボロボロになりました。おやじは自分が走る時は農作業を抜け出してレースを見てくれた。そんなおやじにSGを走る姿を見せてあげたかった」と苦しい胸の内を話した。「でも、この思いをクラシックにぶつけたいと思っている」と前を向く。

 それでも苦境の中にもうれしい出来事はあった。弟子の丸野一樹と一緒にSGの舞台に立つことができたことだ。「丸野がまだ1度も優勝していない時から『一緒にG1に出たい』と酒を飲んで酔う度に言っていた。それがかなったら、今度は『一緒にSGに行きたい』。アホみたいなこと言いやがってと思っていたら、まさか本当になるとはね。でも、あいつの目は真剣だった。それに自分も刺激を受けて変わったし、一緒にSGに行くことができて本当にうれしい」と弟子とともに戦うSGを楽しみにしている。

 「いろいろあったが、またボート界の最高峰の舞台に立てることができて、自分を褒めてあげたい。自分は伸びしろのある成長期。今の若い子にスピード、スタート力で勝てる要素は一個もない。でもそこは経験と気持ちで、ちょっとでも対抗して見せ場だけでもつくりたい」と目を輝かせる。

 「ボートの仕事と、ファンに感謝してこれからも走って行きたい」。弟子、天国で見守ってくれている松本勝也さん、そして最愛の父に見せるためにも、この10年の思いを全部ぶつける。(関西ボート担当・安藤浩貴)

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