【宝塚記念】ゴールドまさかの15着

 「宝塚記念・G1」(28日、阪神)

 目を覆う惨敗劇だった。ファン投票1位で出走し、単勝1・9倍の断然人気に推されたゴールドシップが、ゲート内で立ち上がり大出遅れ。まさかのブービー15着に終わった。史上初となるJRA同一G1・3連覇、ドリームレースV4、ディープインパクトなどと並ぶJRA・G1・7勝の大記録達成だけでなく、同馬絡みの馬券121億円超も全て一瞬にして霧散。阪神競馬場は異様なムードに包まれた。

 期待は不安へと変わり、歓声は一瞬の静けさを経て怒号に変わった。たった2分15秒ほどの間に、これだけファンの感情を振り回した馬がいただろうか。単勝1・9倍、断然の1番人気に推されたゴールドシップがスタートでまさかの大出遅れ。これまで7戦6勝、2着1回と最も得意としていた仁川の舞台で15着に沈んだ。

 大一番で気性難を露呈してしまった。ゲートには目隠しをして先入れ。前走の天皇賞・春制覇時には散々ゲート入りを拒んだだけに、おとなしくゲートインする姿を見てファンは胸をなで下ろしたに違いない。ところが、隣のラブリーデイが入った途端に白目をむいて咆吼(ほうこう)。ゲート内で立ち上がってしまった。

 「あとちょっとというところで馬がうなった。それで最後(発馬)は駄目。この馬らしいね」と横山典は淡々と振り返る。2度目に立ち上がった際にスタートが切られ、ライバルたちから約2秒、7~8馬身遅れる形での発進を余儀なくされた。

 3角手前から上昇するシーンにスタンドは沸き上がったが、馬群の最後尾に取り付くので精いっぱい。直線で全く加速するそぶりを見せない6冠馬に、追うのをあきらめた鞍上。致命的な不利でも、この人馬なら挽回してくれる-。そんなファンの願いが届くことはなかった。

 近日中に放牧に出されるが、次走については白紙。決まっているのは、今回の出遅れによって、天皇賞・春に続き発走調教再審査が課せられることだけだ。「(馬券を)買ってくれたお客さんには悪いけど、これも込みでアイツの個性。それを応援してもらえたら」と関東の名手は理解を求める。2年連続となるファン投票1位での出走を裏切る結果に、「こんな馬をいつも応援してくれてありがたいです。見捨てず、見守ってやってください」。強さと危うさが同居する“悪童”に、須貝師は頭を抱え、言葉を絞り出した。

 史上初のJRA同一G1・3連覇などの記録達成は全て霧散。更新が可能な記録は残されているものの、年々ひどくなるゲート難には解消のメドが立っていない。今後、順風満帆な“出航”ができるか否か-。避けて通れない課題があらためて陣営に突きつけられた。

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