スマホ見てたの!腹痛でトイレに駆け込むも使用中…職場の「こもりスマホ」どう防ぐ?【トイレ研究家が解説】
会社員のAさんは仕事中、突然激しい腹痛に襲われ、職場のトイレへ駆け込んだ。しかし、大便用の個室は1つしかなく使用中。
5分ほど待ってようやく扉が開くと、中から出てきた同僚はスマートフォンを見ながら歩いていった。これに対してAさんは「ずっとスマホを見ていたのか……」と怒りを覚えながら、急いで空いた個室へ飛び込んだ。
職場のトイレでスマートフォンを見ながら長時間過ごす人は少なくない。いわゆる「こもりスマホ」と呼ばれるこの状態を防ぐにはどうすればいいのだろうか。トイレ研究家の白倉正子さんに聞いた。
-職場のトイレでスマートフォンを見ながら長時間滞在する「こもりスマホ」は、どのような問題につながりますか。
もっとも大きいのは、本当にトイレを必要としている人が使えなくなることです。
特に個室が少ない職場では、1人が必要以上に長く利用すると、ほかの人がトイレを使えません。待たされる側に不満がたまり、人間関係にも影響します。
さらに、頻尿や過敏性腸症候群などで一刻も早くトイレを使いたい人にとっては、長時間待つこと自体が大きな不安要素です。場合によっては間に合わず、衣服を汚してしまうこともあります。中にいる人だけでなく、外で待つ人の体調にも配慮が必要です。
サイバーセキュリティ企業が2022年に、世界10カ国で合計9800人を対象にした「トイレでのスマホ利用率調査」では、日本では68%の人がトイレでスマホを利用していると結果が出ました。またアメリカでは70.8%、台湾では85.8%と国によって利用率に差はあるものの、半数以上の人が利用していることが分かります。
このように、トイレの個室でスマートフォンを操作する行為は、決して珍しい行為ではないため影響も広がりやすいです。
とくに個室が少ない職場では、1人が必要以上に長く利用すると、ほかの人がトイレを使えません。待たされる側に不満がたまり、人間関係にも影響します。
-長時間こもっている人に声をかけるときは、どう伝えればよいでしょうか。
「早く出てください」と急かす前に「大丈夫ですか」と安否を確かめてください。腹痛で動けなくなっていたり、急な体調不良に見舞われていたりする可能性があります。
返事があり、体調に問題がないと分かれば「外で待っている人がいます」と伝えれば足ります。
-職場として長時間の占有を減らすには、どのような方法がありますか。
取り組みやすいのは、「混雑時は長時間のご利用をお控えください」といった掲示です。スマートフォンの使用そのものを禁じるより、譲り合いを促す方が受け入れられます。
また、待っている人が個室内に存在を知らせるブザーを試験導入した企業では、男子トイレの平均待ち時間が4.6分から2.7分、女子では3.8分から2.0分に短くなった例もあります。ただ、単にチャイムを鳴らすだけでは、その音が何を意味するのか分からない人もいるでしょう。
「この音が鳴ったら、外で待っている人がいます」と事前に周知したり、音声で知らせたりするなど、意味が伝わる工夫も必要です。
最近では、センサーで個室の満空状況や滞在時間、使用頻度を把握し、液晶画面などへの表示や清掃・備品補充に活用するシステムもあります。
目的はサボっている人を探すことではなく、必要以上の占有を減らしながら、体調の悪い人も安心して使えるようにすることです。
長時間こもっているように見えても、腹痛で出られないだけかもしれません。Aさん自身がそうであったように、誰もが待つ側にも待たれる側にもなります。
◆白倉正子(しらくら・まさこ) トイレ研究家/アントイレプランナー代表
大学時代にトイレをテーマに卒業論文を執筆。1996年からトイレの専門家として活動している。公共トイレをはじめ、トイレの利用環境や清掃、マナーなど幅広いテーマで調査・情報発信を行う。世界トイレ協会(WTA)理事、一般社団法人日本トイレ協会運営委員。著書に『私の人生は「トイレ」から始まった!』(ポプラ社)。日本トイレ協会編『SDGsとトイレ』(柏書房)に編集委員・執筆者として参加。
(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)
