日本国憲法とロックの融合!1971年の伝説レコードがCD再発、有名劇団主宰者が23歳で企画「本気で作った」
昭和の時代、日本国憲法の条文をロック・サウンドに乗せたレコードが存在した。「羅生門」というバンドの演奏で1971年に発表された「日本国憲法 平和・自由・愛」と題したアルバムだ。伝説となっていた同作が55年の時を超え、CDとして22日に再発される。当時の企画者だった劇団WAHAHA本舗主宰・演出家の喰始(たべ・はじめ)氏(78)がコメントを寄せた。
「70年代日本の最も奇妙なロック・アルバム」と称された同作は紙ジャケットのCDが2015年2月に発売されており、今回が再発となる(税別1800円)。ソフトロック、ブルース、プログレなどの要素を含んだ70年代初頭ならではの音楽性は、有名歌手への楽曲提供、映画やテレビドラマ、舞台の音楽、NHK「みんなのうた」で数々の歌唱曲を手がけるなど幅広く活躍したクニ河内の作編曲によるもの。シングルカットされた「戦争の放棄 c/w 天皇」はラジオの深夜放送でリクエストが多かったという。
「羅生門」はクニも在籍したバンド「ザ・ハプニングス・フォー」のベース&ボーカル・ぺぺ吉弘(09年死去、享年67)が日系ハワイアンのボーカリスト、ポール・リーを誘って71年に結成した5人編成のバンド。同作がファーストアルバムとなり、翌年に2作目をリリースしたものの、短期間で消滅している。ちなみに、メンバー中、近尾春親という名のキーボード奏者はのちにミュージシャン、音楽評論家、プロデューサー、タレントなどマルチに活躍する近田春夫の若き日の姿だ。
そのバンドの演奏で憲法の第一章から第十章までの条文が歌い上げられる。例えば、「第二章 戦争の放棄」は「第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」、「第三章 国民の権利及び義務」は「第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」という条文がそのまま歌詞となり、違和感なくサウンドに溶け込む。まさに“音文一致”の「ロック憲法」になっている。
構成を担当した喰氏は当時23歳。放送作家として関わった国民的テレビ番組「巨泉・前武ゲバゲバ90分!」(日本テレビ系列)が終わった頃だった。
喰氏は今回の再発を前に、音楽プロデューサーのサミー前田氏を聞き手に「『びっくりシリーズ』という企画物レコードの依頼があったんですね。じゃあ、日本国憲法に曲を付けてみたらおもしろいんじゃないか、って企画を出したのね。僕は日本国憲法に詳しかったわけではなくて、ただの思いつきだったんだけど、曲をつける憲法を選ぶために初めて日本国憲法をちゃんと読んでみたら、これはおもしろいな、と気付きました」と経緯を説明した。
その上で「(日本国憲法は)民主主義そのものであって、国は国民の為にあり、国民の権利や義務を守らなければならないというところが、それまでの憲法と違ったんでしょう」と解釈。喰氏は「企画物だけど、ただ面白がっているだけではいけない、テーマがテーマなだけに本気で作らなければいけないと思い、憲法のチョイスも大変でした」と回顧し、「僕は録音には立ち会ってはいないから、羅生門のメンバーとは挨拶くらいだったけど、音楽もそんな完成度に仕上がった。でも、これが売れなかった(笑)」と付け加えた。
当時の若者たちが憲法について議論することはあったのか…という前田氏の問いに対し、1947年生まれの団塊世代である喰氏は「ないですね。意外に学生運動やってる連中でもちゃんと憲法を読んでるなんてことはなかったと思う。ほかに議論するようなことはいろいろあったのでしょうけど」と証言。半世紀以上を経た今、現政権による改憲への動きが加速する中、緊急リリースされた「今こそ世に問うべき作品」について、喰氏は「人々が今からでも日本国憲法に興味を持つきっかけになればいいよね」と思いを語った。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
