新年で60周年の「ウルトラマン」フジ隊員が明かす東宝時代、名監督との秘話…“ウルトラ以外”にも歴史あり
巨大変身ヒーローを主軸に据えた特撮テレビドラマのパイオニア的番組「ウルトラマン」(TBS・円谷プロダクション制作)が2026年に放送開始から60周年を迎える。同番組にレギュラー出演した「科学特捜隊」の“紅一点”フジ・アキコ隊員を演じた桜井浩子は今秋、著書「ヒロインの追憶 ウルトラの絆」(立東舎)を世に出したが、節目の年を前に、改めてその前歴となる東宝での映画女優時代、ウルトラ作品に関わった実相寺昭雄監督(06年死去、享年69)の思い出などを当サイトに語った。
桜井は、円谷プロ作品では「ウルトラQ」(TBS系、1966年1~7月放送)での新聞社カメラマン・江戸川由利子役に続き、「ウルトラマン」の主要キャストに抜てきされた。それ以前は、特撮ファンにとって一般的になじみが薄いかもしれない映画の世界にいた。61年、東宝に入社。10代にして「青べか物語」(62年)の川島雄三監督、「江分利満氏の優雅な生活」(63年)の岡本喜八監督、「甘い汗」(64年)の豊田四郎監督ら巨匠も手がけた数々の東宝作品に脇役で出演していた。
世代を超えて旧作邦画マニアの人気が高い川島監督について、桜井は「イスから動かず、いつも座っておられて、立って歩いている姿を見たことがなかった。そして、目がきれいな人でした。ピッと(こちらを)見ますからね。ミノックスというカメラで私のことをパチパチ撮って楽しそうでした。今、考えるとピュアな人でした」と証言した。
さらに、桜井は「東宝で監督は神様ですから。谷口(千吉)先生、千葉(泰樹)先生、豊田先生、川島先生…。私は『青べか物語』で認められて『スリー・チャッピーズ』という若手女優のトリオに入れていただき、その時だけ唯一、東宝でスター扱いしていただいた。越路吹雪さん、扇千景さん、草笛光子さん…といった女優さんと(63年公開の映画『お姐ちゃん三代記』で)ご一緒できた経験は私の宝物ですね」と懐かしんだ。
その後、円谷プロへ。現場の様子は対照的だったという。桜井は「監督と俳優がみんな仲間みたいな感じで驚きました。『これでいい?』って俳優が聞くと、監督も『いいよ』って。岸田森(しん)さん(82年死去、享年43)はタバコで『アチチチ』とかアドリブをやって、実相寺さんと『うまくいった』と声をかけ合うなど同志的な間柄でした。この関係は何だろうと思って、この中に入りたいと思いましたね」と回顧した。
実相寺氏は「ウルトラマン」において第23話「故郷は地球」(ジャミラ)、第34話「空の贈り物」(スカイドン)、第35話「怪獣墓場」(シーボーズ)など数々の作品を残したが、円谷プロ制作の「怪奇大作戦」(68年)の思い出も強い。第4話の「恐怖の電話」で監督として桜井に唯一出した注文は「セリフは声にしないでね。息だけにしてささやいて」だったという。
この『息だけ』演出について、桜井は「例えば『違います』というセリフを言い切るのではなくて、息を吐くように『ち・が・い・ま・す…』と言うみたいな。プレッシャーはありましたけど『それでいい』と言われました」と回顧。さらに「この作品では『無響室』に1時間近く(体の限界)ギリギリまで入って、『音が響かない』ということが、こんなに気持ちと体に良くないもものかと実感しましたまた、路上に失神して倒れ込む演技では、15分間、冷たい環八(環状8号線)のアスファルトの道路に横たわらされました」と振り返った。
そんな過酷な部分があっても実相寺演出を信頼した。「喫茶店で実相寺さんに『ヌーベルバーグの女優みたいに撮るからね』と言われ、67年にフリーになって、東宝のお嬢さん役から脱皮したかった私は歓迎しました。『突然炎のごとく』のジャンヌ・モローとか『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグが好きでしたから。その後も実相寺監督のATG映画『曼陀羅』(71年)に出たり。この映画も岸田森ちゃんと実相寺さんの2人で楽しそうに作っていましたね」
12月28日は岸田さんの命日。そして、新年は実相寺氏の没後20年となり、桜井は傘寿を迎える。「ウルトラ以前」と「(円谷プロでの)ウルトラ以外」のエピソードを語った桜井は改めて「円谷プロは自由でしたね」と感謝した。同社のコーディネーターとして今後も作品の魅力を後世に伝えていく。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
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