赤ちゃんを前向きに抱っこするのはダメ?メリット、デメリットとは 小児科医が解説
まだ歩くことができない赤ちゃんと外を移動しようとすると、大人が抱っこする必要がある。街中で抱っこされている赤ちゃんを見ると、「前向き抱っこ」をされているケースも少なくない。
そんな前向き抱っこは、赤ちゃんが保護者と同じ景色を楽しめることが魅力的ですが、身体の発達や保護者の負担を考えると注意すべき点もある。どのような注意点があるのか、小児科医である竹内雄毅さんに話を聞いた。
ー前向き抱っこにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
大きく3つのメリットがあります。
1.視野が広がる
生後6か月頃の赤ちゃんは、首と腰が安定してくるとともに、まわりの景色や人に関心を示すようになります。 前向き抱っこはその興味を満たし、探索意欲を育てます。
2.気分転換になる
周囲の景色や音に注意が向くため、泣き止んだり、ご機嫌になることもあります。短時間のお散歩や買い物などに適しています。
3.社会的な交流が増える
周囲の人と目が合いやすく、声をかけられる機会が増えることで、親子にとって楽しい経験が広がります。
ー前向き抱っこにはデメリットや注意点はあるのでしょうか?
前向き抱っこには、次のような注意点があります。
1.股関節・背骨への負担
生後4~6か月は、赤ちゃんの股関節や背骨がしっかりしてくる大事な時期です。前向き抱っこでは足が下に伸びてしまい、自然なM字の開脚姿勢が保ちにくくなります。そのため股関節に負担になることがあります。また、背骨は本来少し丸みを帯びていますが、前向き抱っこではまっすぐに伸ばされやすく、赤ちゃんの体には余計な負担となることがあります。
2.頭や首の支持が不十分
首がすわるのは生後3~4か月頃、腰が安定するのは6か月前後とされています。この時期より早くから前向き抱っこを行うと、赤ちゃんにとって無理な姿勢となり、安定性を欠いてしまいます。
3.親子のアイコンタクトが減る
前向き抱っこは、対面抱っこに比べて赤ちゃんの表情や体調の変化に気づきにくく、安心感を得られる非言語的コミュニケーションが減ります。
4.刺激過多になりやすい
光や音、人の動きが直接入りやすいため、敏感な赤ちゃんは疲れやすく、帰宅後にぐずりや夜泣きの原因になることがあります。
5.安全面のリスク
重心が前方に移動するため、歩行中に転倒した場合に赤ちゃんがダメージを受けやすい点にも注意が必要です。
ーヒップシートもよく見かけられますが、使うときに気をつけるべきことはありますか?
ヒップシートは赤ちゃんを腰の位置で支えることで、保護者の肩や腕の負担を軽くしてくれる便利な道具です。ただし、赤ちゃんの体だけでなく、抱っこする人の体への影響も考えて使うことが大切です。
使用に適した時期は、赤ちゃんの腰がすわる 生後6~7か月以降 が目安です。1歳を過ぎてからは、歩き始めた子の短時間の抱っこ補助としても使いやすくなります。
保護者の身体への負担もあり、赤ちゃんの体重は腰に集中するため、腰が弱い方は痛みの原因になることがあります。逆に腰ベルトを使わない商品では、今度は肩に負担がかかりやすく、肩こりを悪化させる場合もあります。
また、腰ベルトはできるだけ高めのウエスト位置で締めると重心が上がり、赤ちゃんをより軽く感じられます。ベルトが緩いと親子双方に負担がかかりやすくなるため注意が必要です。 長時間の使用は避け、10~20分程度の短時間利用にとどめましょう。
◆竹内 雄毅(たけうち ゆうき) 京都府精華町「たけうちファミリークリニック」院長
医学博士・小児外科専門医。京都府立医科大学小児外科客員講師。小児科・小児外科の診療を行う傍ら、病児保育や地域イベントの開催など、子育て世帯を幅広く支援する取り組みに力を入れている。お昼休みには地域の助産師を招き、「抱っことおんぶの教室」を院内で開き、地域の保護者と共に赤ちゃんの成長を支える活動も続けている。
(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)
