名作アニメ「キャプテン劇場版」特別上映 ちばあきお長男、谷口タカオのモデル元担当編集者が秘話明かす

 1984年に41歳で早世した、漫画家ちばあきお原作の野球アニメ「キャプテン劇場版」(1981年、監督:出崎哲)の上映イベントが23日、千葉・キネマ旬報シアターで行われ、ちばあきお長男でちばあきおプロダクション代表の千葉一郎氏(46)と、初代キャプテン・谷口タカオの氏名モデルとなった当時の集英社担当編集・谷口忠男氏(78)がトークイベントを行った。

 単行本全26巻の原作では谷口タカオ、丸井、イガラシ、近藤茂一とキャプテンが代替わりしていったが、印象に残る主将について、千葉氏は「いい味を出しているキャラが多くて絞るのは難しいのですが、気になるのは最初に谷口のことを信じた前キャプテンですね」と、谷口の努力と人柄を見抜き、キャプテンに指名した序盤の主要キャラクターを挙げた。「中学生にしては仕上がっていて、顔立ちも中学生離れしていて、気になっていました。名前もないのですが」と、名前が明かされないまま卒業した前キャプテンへの思い入れを口にした。

 観客からは丸井とイガラシの名前を問う声が挙がった。「弟が慎二なのでイガラシの名前は慎一なのかな、と思うのですが、丸井は全く見当が付きません」という質問に対して、谷口氏は「当時の漫画家はほとんど名字しか考えていませんから、正式な名前はないです。必要もないですしね。イガラシだけは名字がカタカナで、当時は五十嵐という編集者がいましたが、漢字にすると五十嵐なのかというと、それもあきおさんは考えていなかったと思いますよ」とあっさり回答し、観客の笑いを誘っていた。

 劇場版は墨谷二中に転入した谷口が主将に指名され、丸井やイガラシらナインと懸命の努力を重ね、成長していく物語で、青葉中との死闘がクライマックスに据えられた。原作漫画が72年の連載開始から50周年を迎えたことを記念した企画で、当時の35ミリフィルムが、29日まで同館にて1週間限定で上映される。

 この日の上映後、今年3月に出版された「ちばあきおを憶えていますか 昭和と漫画と千葉家の物語」(集英社)のサイン会が行われ、著書の千葉氏、取材に協力した谷口氏がペンを走らせた。アニメ版に対するちばあきおの評価を、谷口氏は「うれしい、と思っていたと思いますよ」とした上で「漫画家は原稿用紙に作品を描くことが一番大事ですから。元アシスタントの座談会で(あきお氏は)『ちばてつやの絵柄から脱却したい』と言っていたと聞いて驚いたことがある。それほど漫画家は原稿に集中している」と、当時の状況を踏まえて言及。千葉氏は2016年に母の文江さんからプロダクション代表を継いで以降、今回のように多くのファンと直接交流した経験は初めてだったといい「熱いお気持ちに触れて、これからもっと頑張らないと、と思いました。父の作品に触れていただける機会を増やしていきたい」と感慨深げに話した。

 「キャプテン」の続編「キャプテン2」は現在、コージィ城倉がちばあきおの絵柄を忠実になぞりながら集英社「グランドジャンプ」で連載中。大学浪人生の谷口が監督を務め、丸井キャプテンのもと、イガラシと近藤が墨谷高野球部でプレーしている。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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