俳優の菅田将暉（２６）が主演映画「アルキメデスの大戦」（公開中）で銀幕に躍動している。主人公の天才数学者を演じるために参考書を開き、机に向かって猛勉強。ベテラン俳優たちを「天才」とうならせた熱すぎる役作りを行った。役者生活１０年目の今年までに俳優だけでなく歌手やラジオパーソナリティーにも挑戦。一つの場所にとどまることを知らない２６歳が、これまでとこれからを語り尽くした。

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　２００９年のテレビ朝日系特撮ドラマ「仮面ライダーＷ」での俳優デビューから１０年。ライダーから内閣総理大臣やサイコパスチックな高校教師にも“変身”。役柄を演じ分ける“カメレオン俳優”として活躍を見せている。

　菅田のストイックな役作りは業界で有名。今年主演した日本テレビ系ドラマ「３年Ａ組－今から皆さんは、人質です－」では病にむしばまれていく男を演じるために１０キロ減量するなど役作りに惜しみない努力を重ねてきた。

　本作で演じたのは、帝国海軍という巨大権力に数学の力で立ち向かい、戦争を止めようとした天才数学者・櫂直。１００年に１人の天才と称される数学者を演じるために今回も徹底的な役作りに励んだ。

　撮入する数カ月前から数学の勉強を開始。仕事の合間に配給会社の一室を訪れ、一生徒として数学の講師から授業を受けた。帰宅してからもルーティンのように参考書を開き、数式の意味を１から１０まで理解することに徹していたという。

　役作りの成果が顕著に見られるのが、クライマックスの会議シーン。共演の舘ひろし（６９）、國村隼（６３）、田中泯（７４）ら大御所俳優が一堂に会する中で菅田がひとり黒板に難解な数式を書きまくる。ベテランたちからこのシーンを「天才」「感動した」と絶賛されるほどだ。

　これほどまでに数字に夢中になれたのは「数学が好きだから」だという。過程を経て一つの答えが導かれる学問の面白さにハマり、いつの間にか理系少年に。学生時代の数学の成績も優秀で、俳優という職業を選択していなければ「数学の教師になっています」と幼き頃の夢を明かした。

　今日の映画界をけん引してきた大物俳優との共演が菅田を刺激した。間近で見る先輩たちの「時代を感じさせる肌の張りやシワ、くすんでいる白目」など細かな芝居に感服し、「アプローチの仕方が個々に詰まっていた」と撮影を振り返った。

　戦争を描く作品であることから“歴史の伝道師”としての責任を感じている。戦争を知らない世代が増える中で「事実以上の何かを同世代に知ってもらいたい。日本という国を知る入り口になったら」と覚悟して、カメラの前に立っている。

　０９年の俳優デビューから今年役者生活１０年を迎えた。１７年にはソロ歌手として本格的に活動開始。今や代表曲「見たこともない景色」「さよならエレジー」はカラオケの定番ソングとなった。

　俳優、歌手にラジオパーソナリティー。マルチな才能を伸ばしている菅田だが、一体どこを目指しているのか－。直球で質問すると「最後に笑って死ぬことが目標。面白くなりたいんです」と真っすぐな瞳で返してきた。

　それぞれの分野で目先の目標は山ほどあるが、最終的には“捕まえられない存在になること”が人生最大のミッション。現在までの達成度を「０点とも１００点とも言えない。やってやったと思うこともあれば、過去にやり残して悔しかったこともある」と厳しく採点。それでもエンターテインメントの世界に足を踏み入れ「普通の高校生だったのに、こうして続けられていることが全て」と言う。

　浪速の高校生からロマンあふれる芸能界へ。「何に関しても捕まえられたくない。俳優業をベースにのらりくらりしていたい」とこれからも長い旅を続けることを誓った。

　芸能生活１０年で“仕事の美学”を確立。仕事とプライベートは徹底的に分けているという。仕事でミスをしたとしても、その仕事の中でミスを取り返し、仕事のストレスを一切プライベートに持ち込まないようにする。

　この美学のおかげかプライベートも充実。俳優の太賀（２６）やシンガー・ソングライターの米津玄師（２８）らと芸能界で幅広い交友関係を築きつつ、学生時代からの友人も大切にしている。

　多忙な日々の合間に取れた休みには、友達とともに大好きなショッピングにカラオケ。「思いっきり遊んでいます。全裸で走り回っている感じ。大学生のような休日を過ごしています」と普段の様子を明かした。

　仕事もプライベートも常に“全力疾走”の２６歳。役者生活１０年で「これほど規模がでかい作品は初めて」とするほどにパワーを注入した今作。「人間味のある人間たちが歴史を作った姿を見てほしい」と呼びかけた。