【ヤマヒロのぴかッと金曜日】わかぎゑふさんのマルチすぎる才能に圧倒 数々のダメだし&ハゲましにいまだ頭上がらず!
わかぎゑふさんって何してる人?って聞かれたら、答えるのが難しいほど多くの顔を持つ。劇団『リリパットアーミー2』2代目座長、『ラックシステム』『玉造小劇店』を主宰し多くの作・演出をこなしながら、商業演劇の作・演出、プロデュース公演も手がけてきた。
なので本業は俳優、劇作家、演出家であるが古典芸能の造詣も深く、歌舞伎「たのきゅう」(坂東三津五郎主演)「色気噺お伊勢帰り」(中村鴈治郎主演)の演出や衣装デザイン、文楽のコメンテーター、落語の執筆、新作狂言の作・演出も手がけるなど、演劇界を縦横無尽に駆け抜ける舞台人というのが正しいかも。他にもエッセイスト、コメンテーターと詳しく紹介したいが紙面が尽きるので、まあこれだけ紹介したら十分か!
私は、人に会うことが仕事のようなものなので、これまで頭の良い人や何かに秀でた人は数多く見てきたが、スケールの大きい人となると、そう何人もいるわけではない。もう随分前、わかぎさんに初めて出会ったとき、その小さな身体から発せられるとてつもないパワーに圧倒されたのをはっきりと覚えている。
関テレアナウンス部時代、年に一度の朗読会でわかぎさんにはずいぶんお世話になったものだが、アナウンサーらしく読み聞かせをするものだと思っていたら、なんのなんの、台詞(せりふ)の間の取り方から所作に至るまで事細かな演技指導が入る。あれは朗読劇と呼んだほうが正確だったなあ。何度ダメ出しを食らったことか。
「ジブン、ええ加減覚えや~!」。あなた、もうそろそろ私の言ってること理解しなさいよ!を大阪ではこう表現する。大阪人は、話し相手のことを『あなた』ではなく『自分』というのだ。根っからの大阪人。
あっ、ちなみに彼女。関西の文化や歴史、言葉にも精通してはります。実際の言葉遣いは多少(いや多少ではないが)荒っぽいが、決して相手の気を悪くさせないのは、ウィットに富んだ言葉のチョイスと、場の作り方が天才的なところ。大胆にして細心、生き方がスマートで面倒見のいいお姉さんを慕う者は多い。大阪松竹座で上演間近の『じゃりン子チエ』で脚本を担当し、お好み焼き屋の主人役に私を推薦してくれたのもわかぎさんだ。
「あんなデカいハコで、僕なんか出ていいんかな?」
「大丈夫や。ヤマヒロはビビリやからやれるよ!」…どう受け取ったらエエんやろか!?
一方で、ご自身が手がける玉造小劇店配給芝居Vol.38『五美~GOMI』(10月28日~11月3日・インディペンデントシアター2nd)では、1960年代から80年代にかけてのファッション界の暴走ぶりを皮肉った話に始まり、発展していく中で日本が忘れ去ったものを描きつつ、来年7月からアパレル製品の廃棄禁止規則が施行されるEUのような「循環型経済」への転換を考えさせてくれそうな作品と聞いている。
「この時代に、ジブンら。ホンマに考えなアカンで!」と決して声高に叫ぶでなく、芝居を通じてどう表現するのか、とても楽しみだ。(元関西テレビアナウンサー)
◆山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。
