渡辺裕太 活躍支える父・徹さんの金言「その道の一流からの教え」生きる マルチな二世俳優が映画「囁きの河」で父と確執ある息子を熱演
俳優・渡辺裕太(36)の「芝居愛」が、熱を増している。映画「囁(ささや)きの河」(27日熊本先行公開、7月11日全国公開)では、主演の中原丈雄(73)演じる父と確執ある息子を好演。「お芝居をやりたくて、この世界に入った」とし、日本テレビ系「news every.」ではリポーターを務めるなどマルチに活動を続ける中、俳優業を「軸」と捉えている。その上で「どんな仕事も全力」がモットー。その根底には、放任主義の父・渡辺徹さんから贈られた、ある「金言」があった。
2022年11月に急逝した徹さんを父に、タレント・榊原郁恵を母に持つ渡辺。いわゆる「二世タレント」として、家族の事を聞かれるのはある種の宿命かもしれない。しかも今作では父と確執のある息子役。だからこそ思い切って、家族の話を聞かれることはつらくないのだろうかと問うと、あくまで淡々と答えた。
「ジャンルによりますよね。映画の仕事は、それは関係なくやらせていただいてるので、そこは自分の中では分けてる。母親の話をしてくださいって仕事もあるので、そういう時はむしろ全力でやらせていただいてる」
言葉の端々に、どんな仕事に対しても真摯に向き合う誠実さがにじみ出ていた。
今作は2020年7月の豪雨で壊滅的被害を受けた熊本の人吉球磨地域が舞台の人間ドラマ。渡辺は幼い時に自分を捨てた父に恨みを持つ息子を演じた。取材時の穏やかな表情から想像できない程に作中では、俳優・中原が演じる父との迫真のけんかシーンも繰り広げている。
「中原さんって何しても雰囲気あって格好良いんですよ!背中に憧れる…じゃないけど、実際に父親に対して思うものってこういうものなのかなって感じた」。徹さんを重ね撮影を振り返った。
実際、徹さんとの確執は「正直ない」とし「コミュニケーションもしっかり取ってた」と苦笑。その上で「僕に口出すことがあんまなかった」と放任主義だったという。 高校の授業で触れた「演劇」に魅せられ、大学進学後は明治座の養成所に所属。その後は劇団養成所の仲間と劇団を立ち上げ、本格的に俳優の道を歩み始めたが、その進路の相談もせず、反対もされなかった。そんな中で、今も胸に残るのが、徹さんから贈られたある言葉だった。
「本当によく言われたのは『ずっと役者を続けたいなら、他のお仕事も全力でやりなさい』と。『その道の一流から教えてもらうことが、おまえの役者の活動にも絶対につながるんだ』って」
バラエティーでもドラマでもマルチに活躍を続けた徹さんらしい教えを胸に「news every.」でのリポーターをはじめ、幅広いフィールドで自分を磨き続けている。「なんでもいただいたものとか、縁があることは一生懸命やるってことですかね」。
その上で自身の「核」が俳優だとという思いも揺るがない。「やっぱりお芝居をやりたくてこの世界に入った。舞台活動とかを地道に続けてはいるけど、これからもずっとやっていきたいし、もっと映画作りにも携わっていきたい。やっぱり知れば知るほど楽しい」
熱い思いがあふれ出るままに続けた。「あとは僕、野菜ソムリエで、野菜の番組(NHK「やさいの時間」)やってるんですけど、今まで出会った農家さんを集めた野菜マルシェをやりたい」
全ての経験を自分の糧にし、全力で挑み続ける日々。俳優業以外の夢を語るその目もしっかりと輝いていた。
◆渡辺裕太(わたなべ・ゆうた)1989年3月28日生まれ。東京都出身。高校の授業で演劇に触れて芝居に興味を持ち、大学時代に明治座の養成所「明治座アカデミー」に所属。2009年俳優デビュー。自身で劇団を立ち上げるなど俳優として精力的に活動する中、日本テレビ系「news every.」ではリポーターを務めるなどマルチに活動。野菜ソムリエ、スキューバダイビングの資格所持。父は俳優の故・渡辺徹さん。母はタレント・榊原郁恵。特技は料理。173センチ。
