レッドベリーがいなければビートルズもいない?映画「レッド・ベリー」をピーター・バラカン氏が解説
ブロードキャスターのピーター・バラカン氏が26日、東京・アップリンク吉祥寺で、字幕監修を務めたドキュメンタリー映画「ロックの礎を築いた男:レッド・ベリー ビートルズとボブ・ディランの原点」(公開中)のトークイベントを行い、レッドベリーの音楽の歴史的な意義、映画の時代的・文化的な背景などを解説した。
レッド・ベリー(レッドベリー)は、殺人で服役するなど波乱の人生を送ったフォークの巨人。1930~40年代に活躍し、代表曲に「グッドナイト・アイリーン」や「ミッドナイト・スペシャル」などがある。ディランに影響を与えたフォーク歌手のウディ・ガスリーと親交があり、ジャニス・ジョプリン、ヴァン・モリソンらロック世代の後進にも多大な影響をおよぼした。
映画ではジョーン・バエズ、B・B・キング、ピート・シーガー、ハリー・ベラフォンテ、アーロ・ガスリー、オデッタら多くの関係者の証言を収めており、レッドベリーのめいの孫がプロデュースしている。
バラカン氏は「この映画を見て僕が知ることはいっぱいありました。すごいよくできた面白い映画だと思います。編集も上手ですし、語る人たちがたくさんいます。相当昔の話もある一方で、けっこう新しく、手広くいろんな関係者の話も聞いているし、しかも全部がポジティブだけじゃなくて、例えばジョン・ローマックス(レッドベリーを世に出した民俗音楽学者)の伝記を書いた人が彼のことをけっこう赤裸々に話していますから、すごく説得力があります」と、映画に太鼓判を押した。
英国では1950年代半ば、ロニー・ドネガンがレッドベリーをカバーした「ロック・アイランド・ライン」の大ヒットでスキッフル(英国の大衆音楽ジャンル)のブームが発生。ドネガンの影響でジョン・レノンが結成したクォリーメン(ビートルズの前身)もスキッフルバンドで、ジョージ・ハリスンは「レッドベリーがいなかったら、ビートルズもなかった」という言葉を残している。米国ではシーガーが結成したウィーヴァーズがカバーした「グッドナイト・アイリーン」が大ヒットした。他にも英国のトム・ジョーンズなど多くの後輩アーティストがカバーしている。
バラカン氏は「(後進が)彼の歌を歌うことによって、ピート・シーガーなんかもレッドベリーの大ファンだし、他の人たちもみんなレッドベリーが好きでやってるし、そうでなければ彼はたぶん(後世に広く)知られなかった可能性もあると思います」と指摘。
「ビートルズの原点というのは何をおいてもロニー・ドネガンなんです。レッドベリーがいなければロニー・ドネガンもヒットしない、ロニー・ドネガンがあれ(『ロック・アイランド・ライン』)をやってなければクォリーメンもない、クォリーメンがなければビートルズもいないというふうに言えなくはない。むしろかなり言えます。(ドネガンがいなくても)エルヴィスとチャック・ベリーの影響でジョン・レノンは何かやったかもしれない。けれども、ロニー・ドネガンがすごく重要だった」とビートルズへの影響を解説した。
また、ディランについても、レッドベリーから影響を受けた楽曲や、ノーベル文学賞を受けた後、レッドベリーを聴いた時の衝撃を書いていることを説明していた。
