将棋の第７４局王将戦７番勝負・第５局が９日、埼玉県深谷市「旧渋沢邸　中の家」で指され、藤井聡太王将（２２＝竜王・名人・王位・王座・棋王・棋聖の七冠）が挑戦者の永瀬拓矢九段（３２）に１２０手で勝利。通算成績を４勝１敗として防衛に成功し、王将戦４連覇を達成した。この勝利でタイトル通算は２８期となり、谷川浩司十七世名人（６２）を抜いて歴代単独５位となった。

　今月２日の棋王戦第３局で防衛し、憧れの谷川十七世名人に肩を並べてから、わずか１週間で追い抜いた。大熱戦が続いたシリーズを制した藤井王将は「非常に難しい局面が多い将棋が続いたかなと感じているので、充実感もありましたし、その中でも結果を残せたこともうれしく思います」と穏やかに話した。

　藤井王将にとって、特別な一局だった。公式戦の後手番で初めて、自身の初手（局全体の２手目）に角道を開ける３四歩を選択。ファンや関係者を大いに驚かせ、永瀬九段をも「意識が抜けてしまっていた。準備不足だった」と嘆かせた。

　藤井王将は「指したことのない将棋だったので、形勢判断がわからないところがあった」と淡々。それでも正確な指し回しでペースをつかむと、最後まで永瀬九段に流れを与えずに押し切った。