海外紀行番組の草分け「兼高かおる世界の旅」（ＴＢＳ系）の案内役として約１５０カ国を巡った旅行ジャーナリストの兼高かおる（かねたか・かおる、本名兼高ローズ）さんが５日午後８時４５分、心不全のため東京都港区で死去した。９０歳。神戸市出身。葬儀・告別式は近親者で行った。後日しのぶ会を開く。

　「海外旅行」という言葉もまだ一般的ではなかった時代に、日本にさまざまな国を紹介した女性が静かに世を去った。兼高さんは東京の香蘭女学校を出た後、米国のロサンゼルス市立大に留学。帰国後、英字紙でフリー記者として活動した。１９５８年に航空会社主催の「世界早回りコンテスト」で７３時間９分３５秒の記録を樹立し、広く知られるようになった。

　日本人の海外渡航が自由化される前の１９５９年にリポーター、ナレーター、プロデューサー、ディレクターを兼任する紀行番組「兼高かおる世界飛び歩き」がスタート。６０年にタイトルが「世界の旅」となり、海外旅行ブームに先駆けた名物番組として、９０年まで３１年間、１５８６回放送された。

　行動力と語学力を武器に各国で取材、南極や北極も訪れた。初めて南極大陸に降りた日本の一般女性でもあった。スペインの画家ダリや暗殺される１３カ月前のジョン・Ｆ・ケネディ米大統領、英国のチャールズ皇太子ら著名人とも面会。総移動距離は約７２１万キロ、地球１８０周分というテレビ史上例を見ないスケールになった。

　兵庫県淡路市の「兼高かおる旅の資料館」名誉館長や横浜市の「横浜人形の家」初代館長も務めた。著書に「私の好きな世界の街」「スーツケースのティー・タイム」など。菊池寛賞、紫綬褒章などを受けた。