小山選手と赤崎選手は未知の力を秘めている 川内選手はすごいの一言で、頭が下がる【宗猛氏の分析】

 パリ五輪の切符を手にした(左から)一山麻緒、鈴木優花、小山直城、赤崎暁(撮影・吉澤敬太)
 雨の中、ラストスパートする川内優輝(撮影・吉澤敬太)
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 「マラソングランドチャンピオンシップ」(15日、国立競技場発着)

 パリ五輪マラソン日本代表選考会で、男子は小山直城(27)=ホンダ=が2時間8分57秒で優勝し、赤崎暁(25)=九電工=が2時間9分6秒で2位に入った。女子は鈴木優花(24)=第一生命グループ=が2時間24分9秒で制し、一山麻緒(26)=資生堂=が2時間24分43秒で続き、計4人が代表に決定した。今後の選考レースで日本陸連が定める記録を上回る選手がいなければ、男子3位の大迫傑(32)=ナイキ、女子3位の細田あい(27)=エディオン=が代表に決まる。1984年ロサンゼルス五輪男子マラソン4位で、旭化成陸上部総監督の宗猛氏がレースを分析した。

 ◇  ◇  ◇

 男子は小山選手が中心になるのでは、という予想はあった。どこで出るのだろう、と思っていたが、残り4キロあたりでスルスルと出た。スパートというよりも、自分のリズムで突っ走るという出方。急にペースアップするのではなく、ジワーッと上げて出た。

 彼は一歩一歩、地面を強く蹴る。フォームの割には上下動も少ない。無理なくスーッとスピードを上げていけるのはマラソン向きだ。急なスパートは、そんなに長くは持たない。残り4キロ付近でスパートしたということは、逃げるという確信を持ってのことで、そこに強さを感じる。

 赤崎選手は今シーズン、トラックでもいい走りをしている。ラストスパートも鋭い。第2集団で、大迫選手や川内選手らと最後のトラック勝負まで我慢すれば、おそらく2位になるというスピードを持っていたにもかかわらず、途中で小山選手を追っていった。相当な練習を積み、スタミナにもかなり自信を持っていたのだろう。

 2人ともマラソン経験は少ないものの、勢いがある。非常に面白く、未知の力を秘めている。パリ五輪も、ある程度の期待を持ちながら見られる感じがした。こういった勢いのある選手が代表に入ることは、日本の男子マラソン界にとって喜ばしいことだ。

 大迫選手は現状を考えれば、順番的には3番あたりだったかと思う。彼や、そのほかのベテラン選手がもう一回奮起して、2時間5分50秒以内を達成してくれれば一番いいのかなと思う。

 スタートの状況を考えたときに、飛び出すとしたら川内選手だろうと予想してはいたものの、冒険はしないだろうとみていた。ただ、これまでのレースでいろいろなシチュエーションを経験しているし、今日のような気象条件は一番得意にしていたと思う。

 最初から飛び出し、自分のペースに持ち込み、最後までうまく逃げられればという想定だったのではないか。逃げ切れる確信はなかったと思うが、彼の持ち味は追いつかれても気持ちを切り替えて、というところにある。集団よりも単独で走った方が力を発揮するタイプで、彼らしいレース。天候を味方につけて、あそこまで逃げて4番に入った。とにかくすごいの一言。頭が下がる。

 女子で代表に入った2人は持ち味を発揮したと思う。鈴木選手はマラソン経験も少ないが、集団の中でも我慢し、離されても我慢した。じわじわと追い上げながらトップに立って逃げた。まだまだ伸びると思う。

 一山選手は、どうしても勝って代表になりたいという思いが強かったように見えた。中盤ぐらいから引っ張るレースをしていた。東京五輪並みとは言わないが、パリ五輪があのときぐらいの厳しい気象条件になってくれば、粘りが生きてくるだろう。

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