藤波朱理「絶対パリで金」中2から100連勝中!レスリング“最強伝説”へ吉田沙保里らに続け

 パリ五輪で金メダルを狙う女子レスリングの藤波朱理(撮影・佐々木彰尚)
 藤波朱理は今春から進学した日体大で日々練習に励む
 藤波俊一コーチ
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 パリ五輪の開幕(2024年7月26日)まで2年を切った。レスリング女子53キロ級で金メダル候補の藤波朱理(18)=日体大=が1日までにデイリースポーツのインタビューに応じ「必ず自分がパリ五輪に出て、金メダルを獲りたいです」と語った。中学2年時の17年9月の大会から無敗の100連勝を継続中。吉田沙保里の206連勝、伊調馨の189連勝の“最強伝説”に続く、ニューヒロイン候補のこれまでの歩みと素顔に迫った。

  ◇  ◇

 2年後に迫った夢舞台で、藤波が夢想する金メダルの輪郭は、日に日に確かなものになっているという。

 「表彰台の一番高いところにいるイメージはできています。毎日想像するし、それができなかったら絶対にかなえられないので。あとは(実際に)やるだけやな、と思ってます」

 女子の五輪階級で2番目に軽い53キロ級にあって、164センチの高身長は持ち味の一つ。同階級で五輪3連覇の吉田沙保里の156センチ、東京五輪金メダルの向田(現・志土地)真優の156センチと比べてもひときわ大きく、手足も長い。

 リーチを生かした攻撃はもちろん、懐が深いだけに相手はタックルに入りにくい。世界に初挑戦した昨年10月の世界選手権では、全4試合を無失点のテクニカルフォール勝ちという圧倒的な優勝で世界に衝撃を与え、“藤波時代”の幕開けを印象づけた。

 勢いに乗る若き世界女王だが、その幼少期は今となっては意外なものだったという。「たぶん誰よりも“女の子、女の子”していたと思います。髪も長くてふわーっとしていたので。プリキュアが大好きでした(笑)」。

 レスリング指導者の父俊一さん、先に競技を始めていた7歳上の兄勇飛の影響で、藤波も4歳からマットに立った。ただ、最初はあくまで遊びの一環。「女の子やし、親もレスリングはやらん方がいいんちゃう?って思っていたと思います。初めは本当に弱かったし、全然本気でやるつもりじゃなかった」。

 小学高学年になると、どうしても勝てない1学年上の相手、伊藤海(現早大)がいた。「毎回ボロボロに負けていました」。楽しくて続けていただけだったが、惨敗の悔しさが少女の負けん気に火をつける。初めて父に「勝ちたい」と打ち明け、走り込み中心の特訓に始まり、本気で勝つためのレスリング生活が幕を開けた。「その選手に勝つために頑張るようになったら、実力もついた」。この頃から人知れず、無敗ロードは始まっていた。

 今日まで積み上げた連勝記録は大台の「100」を突破。メディアで取り上げられる機会も増えたが、藤波自身はピンときていない。「連勝っていっても過去のことなので、次の試合で勝たないと意味がないと思っています。取材で言われることが多くなってきたけど、余計に自分の中でおごることなくっていう意識もありますね」

 国内や世界も制し、パリ五輪も現実味を帯びてきた。今春、日体大進学とともに三重から上京。幼少期からコーチを務める父俊一さんと大学の近くのマンションで二人暮らしを始め、慣れない家事も分担しながら二人三脚で五輪を目指す日々だ。また、日体大でコーチの伊調馨の存在も大きく、「馨さんからポイントを取ることができれば、世界の誰からでも取れる」と連日、胸を借りている。

 昨夏の東京五輪は、自分が戦う姿を具体的に思い描きながら、日本人金メダリスト誕生の瞬間をテレビで見届けた。「練習したこともある選手が優勝してる姿を見て、より身近に五輪を感じました。雲の上の存在だった五輪が、ちょっとずつ見えるようになって。同じ階級にチャンピオンがいるってことが自分にとってうれしいことで、この人を倒してパリ五輪に行きたいって強く思いました」。志土地とは公式戦での対戦はないものの、世界最強のライバルが闘志をかき立ててくれる。

 12月からパリ五輪代表権を争う戦いが始まるが、「本当に厳しい戦いになる」と覚悟もしている。「小さい時からの夢である五輪を2年後に目指せる立場にいることが、昔の自分からしたらすごいこと。ここまで来たからには絶対に五輪に行って、必ず金メダル獲りたい思いでいっぱいです」。新たな最強伝説をつくるべく、18歳は今日も腕を磨いている。

 ◆レスリングのパリ五輪への道 五輪前年に行われる23年世界選手権(ロシア)がパリ五輪1次予選となり、各階級上位5選手に出場枠が与えられ、残りは大陸予選などで決まる。日本協会の五輪代表選考基準は正式に発表されていないものの、東京五輪を参考にすると、今年12月の全日本選手権および、来年6月の明治杯全日本選抜選手権の2大会で優勝した選手が23年世界選手権代表(異なる場合はプレーオフで決定)に決まり、世界選手権のメダル獲得者は五輪切符がほぼ確実となる。

 ◆レスリング女子の五輪階級 全6階級で、軽い方から50キロ級、53キロ級、57キロ級、62キロ級、68キロ級、76キロ級がある。女子レスリングが正式種目となった2004年アテネ五輪から12年ロンドン五輪までは48キロ級、55キロ級、63キロ級、72キロ級の4階級だった。

 ◆藤波朱理(ふじなみ・あかり)2003年11月11日、三重県四日市市出身。レスリング指導者の父俊一さんの影響で4歳から競技を始めた。三重・いなべ総合学園高から日体大に進学。中学2年の全国大会で敗れて以来、公式戦で無敗を続けており、22年6月の明治杯を制した時点で100連勝。21年世界選手権では初出場で初優勝した。趣味は食べることで、YouTubeで大食い動画を見ることが息抜き。家族は両親、兄はレスリング17年世界選手権銅メダルで現総合格闘家の勇飛(26)。164センチ。

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