【東京五輪 祭りのあと】SNS中傷問題 世界から選手へ向いた言葉の刃

 金メダルを手に笑顔を見せる水谷隼(左)と伊藤美誠(代表撮影)
 混合ダブルス決勝で中国の許昕、劉詩ブン組(奥)を破った水谷隼(右)、伊藤美誠組=7月26日
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 新型コロナウイルス禍で1年延期となった東京五輪が8日に閉幕した。大会中止を求める声が根強くある中で、世界各国・地域のアスリートたちが死力を尽くし、関係者がさまざまな思いを抱えながら支えた19日間。デイリースポーツの五輪取材班が「祭りのあと」と題し、大会全般の課題と収穫などを多角的に検証する。第6回は、選手へと向けられたSNSでの誹謗中傷について論じた。

  ◇  ◇

 世界の人々を含め、大多数がテレビやスマートフォンの画面越しに見つめた今大会。誰もがSNSでつながる時代における巨大イベントの新たな問題が浮き彫りとなった。

 世界規模で容赦なく言葉の刃が選手に向かった。卓球混合ダブルスで金メダルを獲得した水谷隼や、体操男子で個人総合金メダルを獲得した橋本大輝、サーフィン男子で銀メダルを獲得した五十嵐カノアらのSNSには結果を巡り、海外の誹謗中傷が殺到した。

 水谷、橋本には2位に敗れた中国選手のファンなどからとみられる中傷が多数書き込まれ、五十嵐には準決勝で敗れたブラジルからの批判コメントで埋め尽くされた。水谷は「とある国から、『○ね、くたばれ、消えろ』とかめっちゃDMくるんだけど免疫ありすぎる俺の心には1ミリもダメージない。それだけ世界中を熱くさせたのかと思うと嬉しいよ」と敢然と立ち向かい、五十嵐も「私は常に他の選手に最大限の敬意を払っていますが、自分がコントロールできないことについて悪口を言いたがる人には我慢できません」と、怒りを表明した。

 橋本に対しては2位に終わった肖若騰(中国)自身がSNSで「選手への誹謗中傷はやめて欲しい」と発信。選手同士はリスペクトし合っている状況の中で、熱戦に水を差す出来事だった。

 また、コロナ禍で開催の是非が問われた中、五輪への批判的な見方から、国内ユーザーからの被害も多かった。体操女子の村上茉愛も、誹謗のコメントを受けていたと明かし「本心を言えないことが、この1年はすごく多かった。アスリートが発言するのは、すごく難しい」と、涙ながらに語った。日本以外の国に目を向けても、SNS中傷が大きな問題となっていた。

 JOCは書き込みについてモニタリングし、中傷事例の記録をとっていた。警視庁と協力し、厳しい措置をとることも表明している。ただ、範囲が海外にまで広がれば、現状対応は難しい。

 いまや選手自身、また競技をアピールする上で、SNSは不可欠なツールとなった。人々を熱狂させる4年に一度の祭典では抜群効果を発揮する一方で、暴走した際の反動はあまりにも大きい。選手、関係者を守る環境整備が急がれる。(デイリースポーツ特別取材班)

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