前田マヒナ 目指すサーフィン界初の五輪金メダル 開催不透明も「未来と過去は考えない」

東京五輪の注目プロサーファーの前田マヒナ(撮影・堀内翔)
前田マヒナ(ゲッティ=共同)
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 東京五輪で新種目となるサーフィンの東京五輪最終予選を兼ねたワールドゲームズ(WG=世界選手権に相当)は、29日に中米のエルサルバドルで開幕する。五輪切符が懸かる激戦を前に、ハワイ出身の東京五輪女子代表候補の前田マヒナ(23)がこのほど、所属契約を交わしたばかりの吉本興業東京本部でデイリースポーツの取材に応じ、WGや五輪への思いを語った。

 東京五輪を目指す戦いも、いよいよ大詰めだ。今月末に始まる五輪最終予選のワールドゲームズ(WG)を前に、ハワイ出身の前田は固い決意を語った。

 「自分はハワイと日本(のルーツを持つ)。両方に見てほしいし、日本代表として、女子のナンバーワン(1番手)で代表権がほしい」

 最終決戦の舞台は中米・エルサルバドル。世界屈指のサーフスポットとして有名な海には、何度か訪れたことがあるという。

 「(波の)パワーはハワイよりはちょっと少ないけど、ある。日本はもっとパワーが少なくて、ちょうど(日本とハワイの)真ん中という感じ。全然苦手じゃないです」

 サーフィン競技の魅力は、波乗りの豪華さや波に乗る優先権を駆使した選手間の心理戦にある。競技の第一人者は、ひと味違う観戦のポイントを教えてくれた。

 「(波乗りの)スタイルを見てほしい。みんなスタイルが全然違うし、(選手の)気持ちも見える。ダンスみたいに『この人すてきだな』と見ると、サーフィンのことが分かってきます。すごくスタイルがいい人は、グレイスフル(優雅)でバレエダンサーみたい。顔のエクスプレッション(表情)も大事かな。(自分も)意識してるけど、結局同じ顔しちゃう(笑)」

 前田の波乗りのスタイルは、ひと味違うという。

 「男っぽくて、エネルギーが結構ある感じ。すごくパワフルに見えるけど、やりすぎると、がちゃがちゃに見える。私のサーフィンは(男性らしさと女性らしさを)半分ずつにしたい。女っぽさがあるときれいに見えるし、エクスプレッションがある。すごくすてきだけど、でもやりすぎるとレイジー(怠惰)に見られることも多くなる」

 エネルギッシュなサーフィンの土台は、鍛え上げた足にある。

 「足の上の方が結構(力が)強くて、体も結構大きい。(足を)太くしすぎるとサーフィンが重たく見えるけど、ちゃんとスピードやパワーを入れるには足の筋肉が必要です」

 自信があるのは、大きく波に“一発”入れることだ。

 「バックサイド(波に背を向けて乗ること)のリッピング(波の先端で乗ること)からシングルマニューバー(1つの軌跡を描くこと)が得意です」

 WG出場のラストチャンスを得たのが昨年11月のジャパンオープンだった。その後は今年3月までハワイで活動。世界有数のビッグウエーブ・ジョーズ(マウイ島の大波ポイント)へ挑戦すると公言していたが、波の状態がいい日に行くことができなかったという。

 「(冬場は)色んな波を試していました。よくない波と大きい波の両方で練習ができました。ジョーズには絶対乗りたい気持ちがあって、来年(の挑戦)を楽しみにしています」

 調子を上げる一方で、東京五輪開催については新型コロナウイルス禍によって、国内外で混乱が続く。アスリートの意見はさまざまだが、前田の意見は冷静だった。

 「(開催可否は)そこまで気にしていません。オリンピックがやれればすごく楽しみだし、トレーニングも一生懸命してきたけど、オリンピックがなくなっても『成長できた』とポジティブにいられます」

 前は向きつつも、五輪への道が続くのなら、全力を尽くすのが選手だ。現状は五輪が開催されるか「分からない」としつつも、まずはWGで五輪切符を取ることを目指している。

 「『今』のことだけ考えて、『未来』と『パスト(過去)』のことは考えない。一生懸命頑張って(五輪に)クオリファイ(出場)して、(五輪で)ゴールドメダルを取りたいです」

 女子は既に内定している選手を除いて上位7人以内に入った上で、日本代表3人中2人以内に入らなければならない。狭き門に、言葉に闘志もにじむ。

 「(ライバルは)多分全員。コロナで他の国がどこまで成長してるか分からない。世界での試合が久しぶりだから、どこまでできるか。『誰(が相手)でも勝てる』と考えていきます」

 見据えるのはサーフィン界初の五輪金メダル。人生一の熱い夏へ、何としても勝ち残る。

 ◆サーフィン五輪への道 出場枠は男女各20人で原則各国2人まで。女子は松田詩野、男子は五十嵐カノア(木下グループ)と村上舜が条件付きで出場権を獲得しており、日本からはこの3人と女子の都筑有夢路、前田マヒナ、男子の大原洋人の計6人が出場するWGを経て決まる。現在出場権を持たない選手は、WGで女子は上位7人、男子は上位5人(ともに五輪代表権を持つ選手を除く)に入った上で、女子は日本人2位以内、男子は村上の成績を上回る必要がある。五十嵐はWGに出場した時点で代表に決まる。松田は、都筑と前田がともに上位7人に入った上で、ともに松田の順位を上回らなければ代表に決定する。

 ◆前田マヒナ穂乃香(まえだ・まひなほのか)1998年2月15日、日本人の両親のもとハワイ・オアフ島で生まれる。父の影響で4歳からサーフィンを始め、13年、14年と世界ジュニア選手権(16歳以下の部)を2連覇。14年に世界サーフリーグ(WSL)のジュニアタイトルを獲得した。19年に日本国籍を選択し、現在の拠点はハワイ。家族は両親と姉と愛犬。「マヒナ」はハワイ語で「月」の意味。162センチ、58キロ。

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