池江璃花子が日本選手権4冠「褒めてあげたい」個人種目で五輪出場の可能性も

 「競泳・日本選手権」(10日、東京アクアティクスセンター)

 9種目で決勝が行われ、白血病からの完全復活を目指す池江璃花子(20)=ルネサンス=が女子50メートル自由形を24秒84で、非五輪種目の50メートルバタフライを25秒56で制し、大会4冠を達成した。両種目とも学生新記録を更新した。白血病の発覚からわずか2年2カ月ながら大会8日間、全11レースを泳ぎ切った。池江は4日に100メートルバタフライ、8日に100メートル自由形で優勝し、400メートルメドレーリレーと400メートルリレーの代表に決定。50メートル自由形を含めて勝った3種目は個人で選考基準を満たした選手がいないため、五輪本番で池江が出場する可能性もある。

 右の拳を強く握って池江は自身最後の決勝の舞台へと向かった。「やってやるぞって気持ちでガッツポーズした」。非五輪種目のバタフライは「余力を残しながら」のレースで奪還。約1時間後、今度は50メートル自由形だ。不安は全部控室に置いてきた。「力むな、力むな」と言い聞かせスタート台に立った。

 入水でわずかに出遅れるも、終盤猛追し先頭へ。減速することなく最後まで粘った。「不安もあったけど、入場した瞬間から絶対勝つと意気込んだ。それが勝利につながった」。覚悟が自然と拳に出た。8日間、11レースを完走。出場した4種目で優勝。「4冠という結果を自分に対して褒めてあげたい」と最高の笑顔を浮かべた。西崎勇コーチとはグータッチをかわし、喜びを分かち合った。

 順風満帆に見える復帰ロードだが、五輪代表入りを決めた時に思い返したのは「誰にも勝てなかった時のこと」。再出発は「勝ちたいと思わなくても勝てた」自分が、誰にも勝てない現実を受け入れることから始まった。練習もついていけず「何でここまで自分がつらい思いをしなきゃいけなかったんだ」と思った日もあった。

 それでも「正直、もう入院していたころよりキツいことはないと思っているので」。泳ぐことを楽しんだ。練習や試合を重ねていくうちに、楽しさの上に「速くなりたい、強くなりたい気持ちがプラスされた」。負けず嫌いに火がついた。

 五輪では個人種目にも出場できる見通し。「決まったからには自分の使命を果たさなきゃいけない。リレーがメインだけど、全力でチームに貢献したい」と自覚を口にした。

 白血病の診断を受けたばかりの19年2月、池江は自身のSNSで「神様は乗り越えられない試練は与えない、自分に乗り越えられない壁はないと思っています」とつづっている。五輪までの数カ月、どんな壁でも乗り越えてみせる。より速く、より強くなって、池江が2度目の五輪に挑む。

◆50メートル自由形、100メートル自由形 100メートルバタフライに可能性

 池江を含めて今大会でリレー種目の代表に決まった選手には、五輪本番で個人種目に出場する可能性が残されている。

 派遣標準記録は日本水連が「決勝進出が可能な選手を選考する」との方針で独自に定めた基準。日本は個人種目2枠とリレーの代表枠を持っており、これまでの五輪や世界選手権でもリレー代表として選ばれた選手が枠の空いている個人種目に出場しているケースは多い。

 体調次第だが、50メートル自由形、100メートル自由形、100メートルバタフライで優勝している池江が個人種目に出場する可能性は高いとみられる。

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