揺れた体操日本女子を救った村上茉愛 チームの「父」に 有言実行の銀メダル
「体操・世界選手権」(1日、ドーハ)
女子個人総合決勝が行われ、村上茉愛(日体大)が4種目合計55・798点で日本勢過去最高成績となる銀メダルを獲得した。各種目の得点は跳馬が14・566点、段違い平行棒が13・566点、平均台が13・666点、ゆかが14・000点。昨年大会では、平均台での落下が響き3位に0・100点差の4位で涙。見事にリベンジを果たしてみせた。
最終種目、昨年の種目別で金メダルを獲得した得意の床で力強い演技を見せると、フロアを降りた後、涙が溢れ出た。3種目を終えた時点の5位から逆転で銀メダル。「自分で掴みにいったので、うれしい」。表彰台を逃した昨年とは違う意味の涙だった。
苦しい苦しい時期を乗り越えた。昨年種目別ゆかで日本女子63年ぶりの金メダルを獲得し、エースとして迎えた今季。7月には右足首のじん帯を部分断裂し、全治3カ月の診断を受けた。内村航平も使う激痛を伴う体外衝撃波治療を行い、大舞台に照準を合わせてきた。8月にはチーム内で暴力、パワハラ問題が勃発。代表候補だった宮川紗江(高須クリニック)が辞退し、塚原千恵子強化本部長が職務停止となるなど激震が走った。それでも村上は「周りがどうなっても、やることは変わらない。何も気にせずにやる」と、自らの役割を全うすることだけを考えていた。
大会前にはチームの「家族」に例えた。主将を務めた寺本と相談し、自ら「父」を名乗った。「お父さんとして、演技で引っ張っていき、ポイントも取る家族の大黒柱になりたい。みんなをまとめる『お母さん』は寺本選手に任せて」と、力強く“エース”宣言。「亭主関白?」と聞かれると「フフッ。そういうイメージです」と笑った。
手にしたのは、日本女子初となるオールラウンダーとしての銀メダル。「私たちの目標は2020年東京五輪でのチームでの金メダル。この銀メダルは来年以降に向けて、いいきっかけになる」。どんな状況でも揺らがぬ大黒柱が、大和撫子の強さを示した。