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日本女子マラソン「ネガティブ・スプリット」で世界と戦う!

 35・5キロ付近で堀江美里(奥)を追い抜きトップに立つ重友梨佐(代表撮影)
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 2020年東京五輪でのメダル獲得を見据えた日本陸連は、世界選手権(8月・ロンドン)の代表選考を兼ねた29日の大阪国際女子マラソンで後半のタイムが前半よりも速い「ネガティブスプリット」というペース設定を初めて導入した。方針に近い走りで後半の追い上げを見せた重友梨佐(29)=天満屋=が優勝を果たしたが、そもそもなぜこの新指針を導入したのか。メダルに届かなかった昨夏のリオデジャネイロ五輪の女子マラソンを振り返りながら整理する。

 これまでマラソンの代表選考会では前半から速いペースで走る「積極性」が重視された。前半に貯金を作って後半は耐えるのが日本勢の戦い方。それが今大会では一転、前半を抑えて後半にペースアップする走法を奨励した。昨夏のリオ五輪で3大会連続メダルなしに終わったことを受け、日本陸連は一大改革に着手したのだ。

 これには世界の潮流が影響している。日本人最高が福士加代子(34)=ワコール=の14位だったリオ五輪を見てみよう。福士は前半をトップと9秒差の1時間13分3秒で折り返した。まだチャンスはあっただろう。しかし後半は1時間16分50秒。3分47秒タイムを落とした一方で、優勝したスムゴング(ケニア)は後半を1分50秒上げた。気温19度と決して悪くはないコンディションの中、日本勢がそろって後半タイムを落としたのとは対照的だった。

 さらに入賞者を見ても、上位6位まで全員が後半にペースアップ。「ネガティブスプリット」は世界で主流のレース走法であり、世界の舞台でメダルを争うには必要な力であるとも言えるだろう。

 また今回、世界選手権や五輪ではペースメーカーが入らないため「独自性を持った選手を育てたい」(河野匡ディレクター)という思いからペースメーカーがつく距離が、昨年の30キロから中間点までに短縮された。

 新戦略を導入して初めて迎えた今大会。尾県貢専務理事は重友の走りを「強化の思いを反映したレースをしてくれた」と評価した。実際のタイムは前半が1時間12分10秒、後半が1時間12分12秒の2秒遅れとはいえ、序盤のペースアップについていかず、後半徐々に追い上げる独自の展開で勝負を制した重友の走りは方針に近い展開だった。以前だったら「積極性に欠ける」と言われてもおかしくなかったが、今回は結果的に賢明な判断と評価されたわけだ。実際、重友もこれまでの方針だったら「もっと追い上げて無理やりつこうとしていた」と振り返っている。

 とはいえ理想は「先頭についても勝てるレース」(瀬古利彦強化戦略プロジェクトリーダー)。根本的な力の差はここからしっかりと埋めていかなければならない。条件は異なるが、単純に重友のタイムとリオ五輪金メダリスト・スムゴングのタイムを比較すると、最後の2・195キロが38秒も遅かった。最終盤の走りも課題の一つ。ただ、右足底筋膜炎の影響で十分な練習が積めていなかったことや、終盤は一人旅になったことを踏まえれば、十分に可能性はあると思う。

 今回の新方針はあくまで試行錯誤の末に放った“第一の矢”。失敗を恐れずにやってみようというのが日本陸連のスタンスだ。それでも、この大会で感じた課題を問われた重友は「もっと上で戦おうと思ったら、後半もっと上げていける状況を作れないと勝負にならない」と断言した。

 「まだ1回目。名古屋(ウィメンズ、3月)も見た上で次のことは考えたい。よければ踏襲していくし、悪ければ変えていく」と瀬古プロジェクトリーダー。河野ディレクターは「五輪は期末試験。そこで100点を取らないといけない責任がある。世界選手権は中間試験。選考会は模擬試験だから」と説明した。われわれがかつて学生時代にそうしたように、模擬試験の結果を見て今後の対策を練ることになる。

 低迷が叫ばれる女子マラソン。東京五輪までの3年間は長いようで短いが、この一歩を踏み出したことに大きな意味があると信じて挑戦を見守りたい。

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