岡本に試練…復調のカギは制球力
開幕から先発ローテを担ってきた岡本が中継ぎに回ることになった。ここまで17試合に登板し6勝6敗、防御率4・04。夏場に差しかかり、壁にぶち当たっている。6月21日のヤクルト戦(神宮)で6勝目を挙げて以降は白星から遠ざかり、直近3試合は5回を投げ切れていなかった。
新人だった昨季は中継ぎを務め、今季から先発に挑戦している。投手に専念したのは大学から。投手経験が豊富とはいえない中で、プロ2年目で先発ローテの一角として、ここまで投げ抜いてきた。その姿勢や奮闘ぶりは十分に評価できる。先発転向は大成功と言って差し支えない。
ただ、シーズンは長丁場。全てが順風満帆に進むほどプロの世界は甘くない。春先は球に勢いがあった。直球に加えカットボールやツーシームなど変化球の切れもあった。だが、最近の登板を見る限り、球全体の勢いが落ちている印象を受ける。直球のキレが影を潜め、左打者の内角への球が弱くシュート回転したり、変化球は高く浮いたりする場面が目立ってきた。
苦戦する一番の要因は制球力にある。若いだけに馬力はあるが、細かな制球力は途上段階だ。球威が十分な時期は力で抑え込めても球の質が落ちてくると、プロの打者は見逃してはくれない。
今年の暑さは異常ともいえる。岡本に限らず、どの先発投手にとっても、身体的に過酷なことに違いはない。こうした苦境で自分を助けてくれるのは、球威ではなく、狙ったコースへ投げ切る制球力だ。厳しいコースや高低を間違えなければ、試合を組み立てることは十分に可能。投手の本質はやはり制球力にある。
勝ち星を重ねている投手を見ればよく分かる。阪神・村上や高橋遥、巨人・井上ら、いずれも制球ミスが少ない。体力的に厳しくなる夏場でも、狙ったコースへ投げ切れる技術があるからこそ勝ち星が伸びている。
岡本は長いイニングを投げ抜くため、昨季終了後からスライダーやカーブといった球種の習得に取り組み、投球の幅を広げた。その成果は前半戦の好投が証明している。次に取り組むべきテーマは、覚えた球種を狙った場所へ投げ切るという精度の追求になる。
過酷な時期に味わう身体の重さや、打たれた際の苦しみなど、その全てがかけがえのない財産だ。足りないことを自問自答し、その課題に向き合うことでしか成長階段を上ることはできない。
中継ぎに回ることにはなったが、そこでしっかりと結果を残せば、また先発に戻るチャンスは十分にあるだろう。新井監督も「限定的」という話をしているそうだ。本人にとっては悔しい配置転換だと思うが、この試練を乗り越えることで、また一回り大きくなって先発に戻ってきてほしい。(デイリースポーツ評論家)
◇横山竜士(よこやま・りゅうじ)1976年6月11日生まれ、50歳。福井県勝山市出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。178センチ、80キロ。福井商時代は甲子園出場はなかったが、1年秋からエースとして活躍。94年度ドラフト5位で広島に入団。97年に中継ぎながらプロ初勝利を含む10勝を挙げる。先発、中継ぎ、抑えと幅広く活躍し、プロ20年目の2014年に現役引退。通算成績は507試合に登板、46勝44敗17セーブ110ホールド、防御率3・42。20年から昨季まで広島で投手コーチを務めた。
