【大瀬良独占手記】いつも最後の試合で…辛い経験を力に変えたからこそ今の自分がある

 球団史上初のリーグ3連覇を達成した広島の大瀬良大地投手(27)がデイリースポーツに独占手記を寄せた。今季は先発の軸として獅子奮迅の活躍。15勝はリーグトップでMVPの有力候補。飛躍の要因、覚悟を持って臨んだ今シーズンの戦いなど…。CS、その先にある日本一へ-。思いの丈を語った。

  ◇  ◇

 昨年10月24日のDeNA戦に中継ぎ登板し、打ち込まれたCSが今年の始まり。大事な短期決戦。先発を任せてもらえるだけの成績と信頼が僕にはなかった。先発じゃないと言われたときには正直、頭がボーッとした。先発としてマウンドに上がりたかったから、悔しいし、苦しかった。

 中学、高校とこれまでの野球人生を振り返ると、なぜか最後の試合で悔しい気持ちになることが多い。プロになっても、それが続いているのかな。でも、その思いや経験を新しい力に変えて何度も奮い立ってきた。だからこそ、今の自分があると思う。

 今季、2段モーションが解禁された。僕にとって一つの転機になった。取り組んでみようと思ったのは自主トレのとき。大学時代、崩れたフォームを修正したりするとき、ステップを踏んで遠投していた。その場面をふと思い出し、その感覚の中で2段モーションを試してみようと思ったのが始まり。

 自分に合わなければやめようと思っていた。でも、丸さんや誠也に「2段モーションは対戦して嫌ですか?」と聞くと「足を上げる打者はタイミングが取りにくくなるし、絶対に嫌」という答えが返ってきた。少しでも打者が嫌がって、さらに真っすぐが戻るのであれば、続けてみようと決意した。

 左足を上下させる段の付け方には注意している。開幕直後にポンポンという軽い形だったものが、途中から上下動が大きくなった。投げやすい形や打者との駆け引きの中で自然とそうなったけど、大きいときの映像を見ると、明らかに背中が丸まっていたりして、悪いフォームに戻る手前だった。だから、動きを極力小さくするのが理想的な動かし方。

 フォーム変更がはまったこともあり、本来の真っすぐが戻ってきた。手応えを感じたのはオープン戦最初の登板になった2月25日の巨人戦(二回降雨ノーゲーム)。勇人さん(坂本)を内角の直球で差し込み、三振を取った場面。元々、相性は良くない。対外試合最初の試合、しかも1人目でそういう打者から三振を奪えたのは自信になった。

 今季の戦いで印象に残っているのは1日のヤクルト戦(神宮)。3点リードの六回に山田君から奪った空振り三振。あれはコースうんぬんじゃなくて力ずくで三振を取りにいった。中軸だし、チームに流れを持ってくるには空振り三振が良いと思っていた。

 理想の真っすぐは、打者が分かっていてもバットに当たらない球。僕と対戦するとき打者は基本、変化球を待っていない。分かっていてもそこで真っすぐを投げて振ってくれると、やっぱり楽しい。

 ここまで決して状態が良いときばかりではなかった。コンディションが万全でないときもあって、ローテを飛ばすか?という話がでた。でも、チームを離れるのは嫌だった。去年が終わって、真っすぐで押す投球は難しいと言われたけど、その真っすぐがようやく良いものになり始めていたときでもあった。それに悪いなりにも試合を作ることができていたから。

 投げ続けてダメになったらそこまでの投手。割り切りもした。それくらい強い覚悟で今季に臨んでいる。それに痛い、かゆいは僕だけじゃなく、みんな持ちながら戦っている。トレーナーさんとか、たくさんの人に迷惑をかけたけど、何とか戦い抜きたかった。

 僕は黒田さんを見てきた。黒田さんはめちゃくちゃしんどそうにしているけど、投げ抜いてきた人。そこにみんなが自然と引き寄せられ、一つになって戦った。コンディションが整わなくても成績を残していける選手がエースにたどり着けると思う。中継ぎをやったこともあるし、黒田さんの姿には、エースはこういう姿なんだ、って感じた。

 ロッカー近くの通路に、黒田さんの足跡を記したプレートが飾ってある。狭い旧広島市民球場時代に防御率1点台を残したり、200投球回を達成したり、すご過ぎる。それが発奮材料になり、見るたびに「頑張ろう」と思えた。僕もいつかそういう存在になりたい。

 今年は先発のキャプテンを任された。立場もあり、若い選手が中心になるけど、投げた後に話を聞いたりした。昂也(高橋昂)は、ZOZOマリン(6月2日・ロッテ戦)で。試合に入るまででどれだけの準備をしたのかとか。今年が1軍デビューの年。だから自分との対戦データがない。でも、ないならないなりにできることがある。例えばスコアラーさんに自分と似た投手との対戦データをお願いして出してもらい、一人一人の強いところと弱いところを頭に入れてから試合に臨む。2軍でやってきたことを出すのは当たり前。そこにプラスアルファをしないと、1軍で抑えるには厳しいところがあるんじゃないかという話はした。

 CSでは結果を出したい。中4日での登板とかを言われたら意気に感じるだろうし、そう言ってもらえるような信頼を得たいと思ってやってきた。まだまだだけど、最後まで突っ走って信頼を勝ち取りたい。

 リーグ3連覇を達成できたことは本当にうれしい。でもなんか、充実感がないと言うか、言葉ではうまく表現できない感情がある。もう1人の自分がすごく喜んではいけない、って言っている感じ。一昨年、昨年よりチームに貢献できているけど、できているからこそ一喜一憂していいのか、と。もっと頑張らないといけない。今はそう思っている。(広島東洋カープ投手)

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