松井秀喜氏「私は長嶋茂雄から逃げられません。それが私の幸せです」涙こらえ恩師へ感謝 葬儀・告別式96人参列

 告別式で弔辞を述べる松井秀喜氏(読売新聞社提供)
 長嶋さんのひつぎを運ぶ(左から時計回りに)中畑清氏、原辰徳氏、松井氏、王貞治氏、高橋由伸氏、堀内恒夫氏、柴田勲氏ら(読売新聞社提供)
 通夜・告別式の会場に設けられた長嶋茂雄さんの祭壇(読売新聞社提供)
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 3日に肺炎のため死去した巨人終身名誉監督の長嶋茂雄さんの葬儀・告別式が8日、東京都内で非公開で営まれ、愛弟子で元巨人、ヤンキースの松井秀喜氏(50)、ソフトバンク・王貞治球団会長(85)ら関係者96人が参列した。弔辞で涙をこらえて思い出を語った松井氏は別れの言葉は告げず「今後も引き続き、よろしくお願いします」と恩師を送り出した。7日には通夜が行われ、126人が参列。多くの人々に愛された「ミスタープロ野球」との別れを惜しんだ。後日、お別れの会が開かれる。

 これからも長嶋監督の心とともに-。弔辞で松井氏は言葉を詰まらせ、あふれそうになる涙をこらえながら、それでも遺影で優しい笑みをたたえる長嶋さんへ向け、時折笑顔をつくりながら感謝の言葉を伝えた。

 「監督、きょうは素振りないですよね?その目を見ていると、『バット持ってこい。今からやるぞ』と言われそうでドキッとします。でも、今はその声を聞きたいです」と恩師へ語りかけた松井氏。長嶋さんとの素振りを介した多くの会話。二人三脚で歩んだ道のりは今や伝説となっている。

 長嶋さんが巨人監督を退任する最後の日まで、それは続いた。涙が止まらない松井氏に長嶋さんは「何泣いてんだ。タオルで涙ふいて、ほら振るぞ」と声をかけた。

 ただ「それが最後だと思っていましたが、翌日もやりましたね。そして、次の年も次の年もやりました」と振り返り、それでも「私は長嶋茂雄から逃げられません。それが私の幸せです」と恩師と過ごした大切な日々をなぞるように語った。

 巨人を、そして野球を愛した長嶋さん。7日に都内の自宅から斎場へ向かう際には、ひつぎを乗せた車が試合中の東京ドームの周りを一周。会場に到着する、ちょうどその頃に楽天戦で勝利を決める増田陸、丸の連続本塁打が生まれた。長嶋さんが最後に起こした奇跡かもしれない。

 そのあふれる愛情と、奇跡のような時間を与えられてきたのが松井氏。現役時代に「サードをやらせてください」と直訴した松井氏に長嶋さんは「俺はお前をジョー・ディマジオにしたいんだ」と諭した。

 自宅を訪問した際にジョー・ディマジオのバットや写真が飾られているのを見て「監督は本当にジョー・ディマジオが好きなんだなと。その選手のようになれと言ってくれたことを、本当に幸せに感じました」。そして引退後に「監督がジョー・ディマジオって言ったから、私、ヤンキースに行ったんですよ」と伝えると、長嶋さんは遺影と同じ優しい笑顔を見せてくれたという。

 4日に自宅へ弔問した際は「長嶋監督と生前、約束したこともありますので。その約束を果たしたい」と話した。「監督が何を望んでいるか自分の心の中で聞いてみます。これからの自分自身とこれからの監督との対話で、監督が導いてくれるんじゃないかなと思っています」と今の思いを明かす。

 だから、別れの言葉は告げなかった。「今度は、私が監督を逃がしません。今後も引き続き、よろしくお願いします」。この先の人生も長嶋さんと語り、ともに歩み、その思いを継承するため、偉大な「ミスタープロ野球」の背を追い続ける。

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