元アスリートたちからの最も多い相談とは? 転身成功のカギは“受け身”から抜け出すこと

 今年も多くのプロ野球選手がユニホームを脱ぐ。現役引退後の道とはどんなものなのか。アスリートのセカンドキャリアを支援するスクール「ABU」学長の中田仁之氏に、実情などを聞いた。また、ヤクルト、巨人などで投手として活躍した藤井秀悟氏が独立リーグの監督に就任する上で準備したこととは…。転身成功へのカギに迫る。

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 現役を退いた元アスリートたちが一般企業への就職や起業を目指す上で、最初にぶつかるテーマ。アスリートのセカンドキャリアを支援するスクール「ABU」学長の中田仁之氏によると「自分に向いている仕事が分からない」「やりたい仕事がない」という相談が最も多いという。だからといって即座に仕事を探す支援はしない。

 「ウチでいろいろな経歴の人たちと一緒に学びながら、まずは自分で考え、自分で気付くきっかけを与えます。私が答えを言ってしまうと“受け身”から抜け出せない。高校、大学とスポーツ推薦で入って、周囲が用意してくれたアスリート人生を歩んできた人たちが多い。その“受け身”から抜け出して、自分で次の道を切り開いてほしい。与えられた職場では長続きしないんです」

 ビジネスマナー、コーチング、英会話、事業計画書の作成、お金のため方などを、これまで出会うことのなかった中小企業診断士、経営者などさまざまな職業の講師から教わる。そして、これまで出会うことのなかった他競技出身の元アスリートたちと共に講義を受け、多くの人とコミュニケーションを取る。「彼らにとって刺激でしかない」(中田氏)という環境に一定期間、身を置くことで、新たな価値観に気づき徐々に新しい世界への適応力が養われていく。視野が広がることで、自分に適した職業、興味の持てる仕事も見えてくる。

 就職先企業とのマッチングも慎重に行う。何度も顔合わせをし、言葉を交わし、ここでなら働ける、この人を雇いたい、という双方の思いが合致した職場へと送り出す。その結果、これまで紹介した元アスリートの離職率は0%だという。

 かつてヤクルト、巨人などで投手として活躍した藤井秀悟氏(45)も受講生の一人だ。「野球しかしてこなかったですから、いろいろな分野の専門家の方たちから、自分が知らなかったことを学べたことは良かったと思います」。藤井氏は今年から野球の関西独立リーグ・大阪ゼロロクブルズで指導者となり、来季からは監督を務める。

 「(講義を受けて)いろいろな気付きがありました。野球を教える上で、同じことを伝えるにしても言い方ひとつで伝わり方が違ってくる。話し方とか会話の組み立て方とかを考えたりすることができました。それを知っているのと知らないのとでは、かなり違うと思いましたね」

 ただ、誰もが順調に成長できるとは限らない。伸びる人の特徴として、中田氏は「教わり上手」を挙げる。「分からないことは分からないと素直に言って教えてもらう人は伸びます」。そして「実践したことを報告できる人」だという。

 「自分で何かをやってみて講師に報告する。すると教えた側もさらにアドバイスしようと思う。そういう人にはどんな講師もアドバイスしやすいですから、結果的に伸びていくわけです」。この姿勢が転身成功への重要なカギというわけだ。(デイリースポーツ・岩田卓士)

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