平田・高橋 天国の弟に届けた全力投球 7年前の夏…水難事故で急死

 「高校野球交流試合、創成館4-0平田」(11日、甲子園球場)

 聖地のマウンドに上がると、平田・高橋はフッと一息吐いて亡き弟を思い浮かべた。「いまから投げるぞ」。八回に0-4とリードを広げられ、なおも2死一、二塁の場面で救援。普段からのルーティンで集中し、三ゴロでピンチを脱した。

 別れは突然だった。小5の夏、4学年下でたった一人の弟・憲史君が急死。海での水難事故だった。「ずっとキャッチボールとか、ボールを投げてあげて打ったり」。いつも二人で白球を追っていた。自分よりも野球が大好きで、正直なところ自分よりもうまかったと感じている。

 悲しみに暮れる日々から奮い立たせてくれたのは、ほかでもなく憲史君の存在が大きい。「弟のために、僕は野球をやっているというような感じなので。弟の分まで頑張るという感じでやっていました」。毎年8月8日の命日にはもちろん、野球で行き詰まると決まって弟を失った海へ足を向ける。

 「弟と会話をするというか、話をして。もう一回、野球を一からやっていこうと」。中学時代に腰をケガしたときも、高校に入ってイップス気味になったときも、海で亡き弟と心を通わせながら気持ちを入れ直してきた。

 幼いころ憲史君と一緒にテレビで見ていた舞台でのプレーがかなった。試合開始の整列前。生前の写真を握りしめ、全力を尽くすと誓った。六回の三塁守備では強烈な打球を好捕。併殺を完成させ、チームをもり立てた。好プレーには思わず声を上げていた弟。「特に興奮して見ていてくれたかな」。少し得意げに空を見上げた。

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