阪神にまた新星 井坪が1軍初昇格初打席で初安打 全力疾走で糸原V撃呼んだ 破天荒な幼少期経て「華のある選手になりたい」

 2回、内野安打を放つ井坪(撮影・立川洋一郎)
 6回、熊谷の適時打で生還し、ナインとタッチを交わす井坪
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 「阪神5-4中日」(19日、京セラドーム大阪)

 新たな“ラッキーボーイ”の登場だ。阪神は1-1の二回1死一、二塁で、この日プロ初昇格を果たしてスタメン出場の井坪陽生外野手(20)が、三塁への内野安打でプロ初打席初安打をマーク。相手守備のミスも絡み、一気に2点を奪う幸運を呼び込んだ。唯一負け越していた中日との対戦成績を五分とし、優勝マジックも1つ減って「21」となった。

 井坪は少し悔しそうな表情でベンチへ戻った。それでもプロ初安打を祝福する仲間たちを見ると、自然と頬が緩む。記念球を受け取るとほっとした表情で喜びをかみしめた。

 「ちょっと中途半端なスイングになったんですけど、結果的にHがついたので一安心かなと」

 高卒3年目で初昇格し、「8番・中堅」で即スタメン出場。「緊張はなかったけど、ほどよい感じで」と強心臓で臨むと、運命の瞬間は思わぬ形で訪れた。二回、同点に追いつきなおも1死一、二塁で迎えたプロ初打席。マラーの初球にハーフスイングとなったものの、弱いゴロは三塁線へ。三塁・チェイビスの一塁への送球がそれ、一気に2人生還。三塁を狙った井坪は挟殺となったが、逆転に成功した。ベンチでは藤川監督から「おめでとう。よかったね」と祝福され、はにかんだ。

 幼い頃からやんちゃ坊主だった。小学生時代は落ち着きがなさすぎて「散歩してきなさい」と先生に教室から追い出されたこともあった。今でも七夕の願い事に「真面目になれますように」と書くほどの自他ともに認める破天荒な性格だが、野球には真っすぐだ。

 1年目は一時、ウエスタン首位打者に君臨し昇格が期待され、自身も「もしかしたら」と頭をよぎったが、かなわなかった。それでもめげなかった。常に言ってきたのは「走攻守でのレベルアップ」。23年のオフは、工藤2軍外野守備コーチからの減量指令に応えた。

 母校・関東第一のグラウンドを借りて朝からフリー打撃や走塁練習。夜は家の前を走り、一日中トレーニングに明け暮れた。食事は米を抜き、朝は納豆とヨーグルト、昼はキュウリ、夜はサラダという徹底ぶり。実家の近くにワニ肉の自販機があるといい、「鶏より脂質が低いから」と焼いて食べたことも。ど根性で6キロの減量に成功した。

 ウエスタン打率・275を残した24年のオフも地元で年始は2日から始動。体の強さ、スピード強化のため毎日ジムに通い、ウエートトレーニング。春季キャンプは初の宜野座組入りし、ウエスタンでも打率・261と結果を残せた。努力は1軍の舞台で実を結んだ。同点の六回2死二塁では藤嶋の3球目を強振。三塁へのゴロをチェイビスが取りこぼすと、井坪は全力疾走でセーフをもぎ取った。安打は記録されずも好機を拡大し、勝ち越しを呼んだ。

 藤川監督から守備力を期待された起用意図は分からなかったというが、「何かを評価して使ってくれてるんだな」とバットで期待に応え、チームは優勝マジック21となった。幼い頃はベルーナドームに通い、当時西武の中島宏之にあこがれた。「つまらない選手にはなりたくない。華のある選手になりたい」。第一歩を踏み出した20歳が、華麗なプレーで多くの人を魅了していく。

 ◆井坪 陽生(いつぼ・ひなせ)2005年3月17日生まれ、20歳。東京都八王子市出身。177センチ、83キロ。右投げ右打ち。外野手。関東第一では甲子園出場なし。22年度ドラフト3位で阪神入団。今季ウエスタン73試合に出場し222打数58安打、2本塁打。打率.261。

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