阪神 岡田継投の代名詞「一人一殺」 7・30広島戦、役割明確化で集中力研ぎ澄ませた加治屋、島本
就任1年目で見事に阪神を18年ぶりのリーグ制覇に導いた岡田彰布監督(65)。先の先まで読み切ったような采配は何度も見る者をうならせた。その“神采配”を振り返る。
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終盤での「一人一殺」は「岡田継投」の代名詞だった。7月30日・広島戦(甲子園)の八回。2点差に迫られ、なおも1死二、三塁で右打者の菊池を迎えると、岡田監督は先発の伊藤将に代えて加治屋を送り出した。右腕が1球で二飛に仕留めると、続く左打者の秋山には左腕の島本を投入。フルカウントの末、遊飛に打ち取った。
加治屋は準備万全だった。七回あたりから作り始めていた右肩は既に「戦闘態勢でした」。緊迫したマウンドに向かうと、捕手の梅野が切り出した。「カットボールからいこう」。心は決まった。自信を持って投げ込んだ141キロが「最高の結果」を導いた。加治屋には確信もあった。ブルペンでは隣で島本が準備していた。「投げるのは菊池さん一人だ」。役割が明確化され、集中力は研ぎ澄まされていった。
島本はブルペンで岩崎に初球の入り方を相談していた。秋山とは通算2度目の対戦。「インコースも面白いな。ボールでもいいから1球見せていこう」。授かった助言通り、143キロの直球で内角低めをえぐった。最後はフルカウントから投じたスライダーで仕留めた。左腕は「甘く入ったけど、結果的には初球が効いた」と“勝因”を分析した。
「今日は(広島打線が)ジグザグやからな、もう(一人)一殺で。(秋山に)フォアボールでも島本は行ってたよ、(続く4番で右打者の)上本でも。(代打で)松山を出したくなかったからね」。岡田監督は“松山封じ”の意図も明かした。この日は2連投の岩貞をベンチから外していた。加治屋、島本は6連戦で5試合目の登板だったが「今、調子いいピッチャーを選択した」という虎将の信頼に応えて見せた。
加治屋が登板する直前、無死一、二塁で小園が犠打で送っていた。岡田監督は述懐した。「俺やったら打たせとったけどな。小園の方が怖かったね」。前日には2度の同点打を含む3安打を許していた。小園の調子より走者を進める確実性を優先した敵将、加治屋と島本の調子を信じ抜いた岡田監督。隠れた勝負のあやでもあった。
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