試合の流れを手繰り寄せた岡田阪神の“足攻” 絶妙タイミングだったエンドラン、盗塁判断も柔軟に変更
阪神が18年ぶり6度目のリーグ制覇を達成した。今季から2度目の指揮を執る岡田彰布監督(65)の目指す野球が浸透し、2位以下を大きく引き離してゴールテープを切った。岡田野球を6回にわたってひもといていく。第5回は走塁編。
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「足」を使った攻撃は盗塁だけではない。岡田監督が采配で雄弁に物語った。今季多用したエンドランが幾度も活路を開いた。
7月11日のDeNA戦(倉敷)だった。3-2の五回1死一塁で梅野が打席に入ると、岡田監督はすかさず動いた。初球にエンドランを敢行。梅野が左前に運ぶと、一走・佐藤輝は一気に三塁へ到達した。続く木浪の適時打で2点を追加し、勝利を決定付けた。
「動かないとね、ずっと点が入らないから。だいたい初球ね、ストライクゾーンに(投球が)来とったからね」。相手バッテリーの配球を見透かした鮮やかな一手だった。筒井外野守備走塁コーチは「監督はポイントだけでなく試合の流れを見て全体を把握されている。(サインには)根拠や裏付けがある」と采配の妙に感服する。
優勝が目前に迫った9月12日・巨人戦(甲子園)も1死一塁からエンドランが突破口となり、最後は木浪の犠飛で虎の子の1点をもぎ取った。今季の「岡田野球」の一端を象徴する勝利だった。
盗塁に関しては選手に判断を委ねる「グリーンライト」を撤廃する方針で臨んだ。近本は「チームが必要な時に決められればいい」と淡々と語っていたが、中野は「サイン(で動く)という部分もあって(走る)気持ちを作るのが難しかった」と心中を明かした。ベンチ主導となることで全体の盗塁数が伸び悩むのは必然だった。
だが、中盤戦を境に一部選手を除き、相手投手などによって「グリーンライト」を容認。7月は「7」だったチーム盗塁数が8月には「16」と飛躍的に伸びた。成功率は昨季の75・9%から72・9%と数字を下げたが、それでもリーグ2位の高水準を維持しており、筒井コーチは「スタイルが大きく変わった中での取り組みだったが、比較的うまくいっている」と及第点を与えた。ベンチの意図に選手が足でも応え、“アレ”へと一気に加速していった。
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