【佐藤義則氏の眼】阪神・ケラーはまだ本調子ではない 開幕守護神決定も不安視
「ウエスタン、オリックス0-3阪神」(23日、杉本商事バファローズスタジアム舞洲)
阪神の新外国人、カイル・ケラー投手(28)が開幕から守護神を務めることが決まった。昨季まで在籍したスアレスの代役が期待されているが、オープン戦2試合の投球を見たデイリースポーツ評論家の佐藤義則氏(67)は「まだ本調子ではないのでは」と高めに浮く投球を不安視した。ただ、昨季のメジャーでの投球は絶賛。本来の力を発揮できれば、大いに活躍は望めるという。
◇ ◇
矢野監督が開幕からケラーを抑えに使うことを決めた。オープン戦2試合(15日・ソフトバンク戦、18日・オリックス戦)の内容から判断したということだけど、私もこの2試合を見たが、「大丈夫かな」というのが率直な感想だ。
2試合とも1回無失点には抑えたけど、全体的に球が高く、抜け球も多かった。この投球ではオープン戦では抑えられても、シーズンに入ると、そうは簡単にいかない。長打を浴びるケースもありそうだし、ピンチなど緊張した場面ではストライクが入らなくなる可能性もある。
原因は投球フォームにある。しっかりと右ひじをたたんで投げられていない。リリースの時にひじが伸びるのが早く「アーム式」のような投げ方になっているので、球離れも早く、球が高めに抜けたりシュート回転する。ひじをたたんで球持ちを長くして、しっかりと前で振り切ることができれば、もっとスピードも出るし、低めに投げられると思うんだけどね。
本人が決め球に挙げているカーブも物足りない。パワーカーブという触れ込みだが、球速は120キロ台で、曲がりもそれほど鋭くない。空振りを取ろうと思えば、やはりフォーク並みのスピードは欲しいし、もっとブレーキの利いた曲がりが必要だ。今の球ならバットに当てるのはそう難しくないので、三振を取るための決め球にはならない。新球のスラッター(スライダーとカットボールの中間球)という球もあるようだけど、この球も果たして、それほど武器になるのかどうか。
現状のピッチングを見る限りは、開幕から抑えを任せるのは心もとない。スアレスのように160キロを超える球があるわけではなく、かといって制球がそれほどいいわけでもない。オープン戦を見た感じでは、抑えは経験豊富な岩崎でスタートした方がいいんじゃないかと感じた。
ただ、ケラーがそこまでの投手かといえば、そうではない。昨年メジャーで32試合に登板した時の映像を見たが、オープン戦2試合の時とは別人のような投球をしていた。しっかりと右ひじがたたまれ、力強い腕の振りとともに糸を引くような球が低めに決まっていた。指にもかかっているので高めの球でも空振りが取れていた。こういう投球ができれば抑えでも十分にやっていける。
新型コロナの影響でチーム合流が遅れたため、まだ本来の力を出し切れていないんじゃないかな。今後、しっかりと投げ込んでいけば状態は上がっていくだろう。力があるのは間違いないし、荒々しい投げっぷりも悪くない。いずれにしても開幕ストッパーに指名された以上は結果がすべて。チームのために全力で頑張ってほしい。
◇カイル・ケラー(Kyle Keller)1993年4月28日生まれ、28歳。米国ルイジアナ州出身。193センチ、86キロ。右投げ右打ち。投手。背番号42。サウスイースタン・ルイジアナ大から15年ドラフト18巡目でマーリンズ入団。19年8月にメジャーデビュー。20年のエンゼルスを経て、21年はパイレーツでプレー。メジャー通算成績は44試合1勝1敗、防御率5・83。
関連ニュース




