原口 代打で最高すぎる復活劇!ファン涙 がんから293日ぶり1軍即適時二塁打

 「交流戦、ロッテ3-11阪神」(4日、ZOZOマリンスタジアム)

 こんな復活劇があるなんて…。「日本生命セ・パ交流戦2019」が開幕し、大腸がんを乗り越えて出場選手登録された阪神・原口文仁捕手(27)が、九回1死三塁から代打で左越えの適時二塁打を放った。勝負強い打撃だけでなく、全力疾走で向かった二塁に頭から滑り込んだ背番号94。スタンドからは大きな拍手と大歓声が降り注ぎ、涙を流すファンの姿もあった。交流戦初戦を2桁11得点の大勝で飾った矢野阪神に、頼もしい男が帰ってきた。

 グラウンドに足を踏み入れた瞬間、三塁側スタンドは総立ちで迎えた。応援タオルを掲げた少年が、声を嗄(か)らして名を叫ぶ。涙を流す男性もいる。大声援を背にした原口は、客席を見上げながら歩みを進めた。打席と、左翼席に一礼。293日ぶりに戻ってきた。約束の場所だ。

 「(スタンドで見守る)家族に向かって、行ってくるよと。これから頑張るよという意味を込めて。この景色を、目に焼き付けておこうと思いました」

 ここに立つために、鍛え抜いた日々よ-。

 久々に聞く応援歌に揺られ、マウンドのレイビンに視線を向けた。出番は九回。同い年の梅野が二盗、三盗でお膳立てした好機。初球、2球目と、迷いのないスイングでファウルとした。ボールを挟んで4球目。高めのスライダーを狙う。「いけ、いけ!!」。願いを乗せた白球がグングンと伸び、左翼手・菅野の頭上を越えた。

 フェンスで跳ね返る打球に、迷わず二塁へ向けて加速。「2、3年ぶり」というヘッドスライディングで、豪快にベースに滑り込んだ。熱狂の渦に包まれる球場。代走を送られると、ベンチ前には矢野監督が待つ。復帰後初打席、初安打の記念球を手に添えて。「新しい野球人生のスタート。いい結果になってよかった」と笑った。

 「先生、練習はしてもいいですか」

 告知後すぐ担当医に聞いたのは、手術日まで体を動かせるかどうかだった。病名を聞いたショックも、治らなかったら…という不安よりも、野球から離れることが嫌だった。「変わらず練習していました。早く戻れるよう、体力を落とさないように」。腹が痛い、足が痛い、苦しむ術後も「5月上旬には1軍に」と復帰を逆算した。

 そんな原口以上に妻は気丈な姿で支えた。出産後、実家に戻っていたが、発覚翌日にはすぐ帰阪。娘と3人、寄り添いながら復帰に向けた日々を歩いた。「もう治ったんだからね。大丈夫だから。もうガンじゃないよ」。術後、何度も聞いた妻の言葉が耳に残る。「そうだな、いつまでも引きずっても仕方がないって。そう思わせてくれました」。1人じゃない。そんな毎日が、前を向く理由になった。

 試合後。無人のグラウンドに殊勲を待つ声が響く。「原口、原口!!」。梅野と2人、敵地では異例のヒーローインタビュー。涙をこらえるよう、震える声を隠すように、努めて明るく振る舞った。「終わってみたら胃がキリキリと痛いです」。潤んだ瞳が照明で光る。また、この場所に戻ってきた。勇気と感謝を届けながら、新たな野球人生が幕を開ける。

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