球児1000奪三振「いいタイミング」 チームを一丸にする力投
「阪神5-3ヤクルト」(26日、甲子園球場)
喝采を浴びた。復帰後初めて上がる甲子園のお立ち台。偉業を成し遂げた充実感が気持ちいい。「矢野さんとか監督とか、自分たちと一緒にやって来たので。共有、共感できるということではすごくありがたかったし、いいタイミングでの三振だったような気がします」。ほんの少しだけ、藤川が頬を緩めた。
見せ場は八回1死一塁。打者は大引。初球141キロ直球で見逃しを奪うと、2球目はファウルで追い込む。1ボールを挟んだ後の4球目内角高め146キロ直球で空を切らせた。日米通算1000個目の奪三振。これまでの999個と同じ、ずっと決め球にしていたコースだった。
空振り三振に仕留めても表情は崩さず、すぐに「1001」個目を取る準備に移った。だが西浦を内野安打で出塁させ、一、二塁のピンチを背負うと打席にはバレンティン。初球はボールだったが、外角低めでカウントを稼いだ。一瞬でも見逃せない対決。7球目、真ん中低め140キロで三振。勝負あった。
3アウトを取って花束を受けると右手を掲げ、声援に応えた。ベンチに戻る際は真っ先に鳥谷とハイタッチ。続けて他のナインからも祝福を受けた。「バレンティンを三振に取ったボールも素晴らしいボールでキレがあった。おそらくまっすぐしか待ってなかったと思うんですけど、その中で取れた空振り。やっぱり球児ですね」。金本監督も最敬礼だ。
「パレードがしたい」-。その思いで縦じまに袖を通した。任された先は、かつての主戦場とは異なる先発。だが結果を残せず2軍調整を経験し、その後もうまくいかず、中継ぎへ再転向。二転三転した末につかんだ。
「チームとしてのリリーフから先発に転向とか、その逆も含めて自分もいい勉強になりますし。現役を続けながら野球を深く知れて、いい人生だなと思います」
現在は最下位に低迷するが諦めていない。「これから起こることにトライしていくだけです」。聖地に鳴り響いた六甲おろし。チームを一丸にする力投だった。