鳥谷がV打 34打席ぶりタイムリー

 「阪神2-1巨人」(21日、甲子園)

 ニコリともしない。それがこの男が誰より頼れるキャプテンであるゆえんだ。そこまで3三振の屈辱を引きずることはない。「その前3打席は忘れて、ここで打ちたいと思って立ちました」と阪神・鳥谷。一打でプロとしての生きざまを見せつけた。

 1点ビハインドの八回、和田監督が繰り出した4者連続の代打攻勢。新井良の犠飛で同点に追いつくと、2死一、三塁で前日に続いて1番の鳥谷が打席に入った。

 マシソンの荒れた直球がすべて高めに浮く。冷静に見極めて2ボール1ストライク。真ん中高めの149キロをジャストミートした打球は右前へ抜けた。10日・広島戦(甲子園)以来、8試合ぶり、34打席ぶりの適時打だ。

 「本当なら横山がいいピッチングをしていたので何とか勝ちをつけてあげたかった」と悔いは残った。初対戦のマイコラスの前に3三振。5月はここまで打率・183と極端な不振に陥っている。ただ、そんな時に底力を出せるのは、日々の積み重ねがあるからだ。

 シーズン中も早出を欠かさないキャプテンは、春季キャンプでも志願の特守を宜野座サブグラウンドで続けた。無尽蔵の体力に、ノックを受け持った高代作戦兼内野守備走塁コーチは「オレの方が膝がガクガクしたよ」と苦笑いする。来月には34歳。体をいじめ続けて得た力は、鳥谷自身が誰より信じている。

 和田監督は「本人も苦しんでいたと思うけど、今日の適時打で元の姿を取り戻してくれるでしょう」と復活の兆しを感じ取った。「明日から相手は首位(DeNA)。この勢いで3つ勝っていきたい」とお立ち台で宣言した鳥谷。試練であればあるほど、相手が大きければ大きいほど力を出す。いよいよこの男の出番だ。

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