マートン全力疾走&マルチ安打
「ヤクルト5-7阪神」(13日、神宮)
こんなマートンが見たかった。不振だった阪神マット・マートン外野手(33)が5番・左翼で2試合ぶりにスタメン復帰しマルチ安打を放った。二回にはアウトにはなったものの、迫力満点の本塁突入でナインを鼓舞。チームは先発野手全員安打、12試合ぶりの2桁安打で7得点し、連敗を3で止めた。さあ、ここから反撃や!
「ゴー!」の合図とともにマートンは迷わず突入した。0-0の二回。ヒットメーカーの右線二塁打を突破口に築いた1死三塁の好機で、一触即発のシーンが訪れた。
伊藤隼が右飛を打ち上げると、三塁走者の背番号9はタッチアップから西田がブロックするホーム目掛けて猛進し、正面からタックル。雄平からのレーザービームを受けた23歳捕手がもんどり打って転倒すると、ヤクルトベンチがヒートアップした。マートンはベンチに戻りかけた足を止め、大声を発して応戦。両軍がホームを境界線ににらみ合う事態になった。
ヤクルト側からすれば過去遍歴があるだけに、この衝突プレーに敏感に反応したが、和田監督は「マートン本来の気持ちが入っていた」と気迫を称賛。この回得点はならなかったが、連敗ストップの焦点に挙げた。
安打製造機はフラストレーションを晴らすかのように躍動した。六回には福留の4号2ランを呼び込む左前安打を放ち、八回1死満塁の場面では代打狩野の中飛で三塁走者として、二回と同じように再び本塁に突入。返球が大きくそれ、空いたホームにスライディングで7点目を奪った。2試合ぶりにスタメン復帰した負けられない戦いで2安打2得点。試合後、大歓声の降り注ぐ左翼席に手を挙げ、ファウルゾーンの客席に歩みよって猛虎党と握手を交わした。
「いい勝利になったと思います」
発したコメントはたったひと言だけだったが、紅潮したその表情には充実感が漂った。
10日の広島戦(甲子園)でスタメン落ちし、一度も打席に立たぬまま3連戦3連敗を見届けた。今季35試合目にして和田監督が聖域に踏み込み、その時点で打率・233の助っ人をオーダーから外す断を下した。最多安打3度の勲章を持つ昨季の首位打者が、来日以来、最大の危機的状況を迎えていた。
「きょうは集中力があった」。一塁まで全力で走らないパフォーマンスを無気力と指摘する周囲の声もあったが、この日、目いっぱいのプレーではね返した。マートンのリスタートとともに、虎の逆襲が始まる。
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