東京遠征で門限破り…広島に強制送還 カープOB安仁屋宗八氏が振り返る昭和プロ野球

 広島、阪神で通算119勝をマークし、現在はデイリースポーツ評論家を務める安仁屋宗八氏が、現役時代の記憶を振り返ります。今では想像もつかない昭和ならではの破天荒なエピソードを語り尽くします。

  ◇  ◇

 今年もリーグ優勝という美酒に酔うことができなかった。残念だけど仕方がない。来年こそ、だね。

 ところで、安仁屋=アルコールというイメージが強いみたいだが、実のところ僕は、なけりゃないでまったく構わないタイプ。皆でワーワー言いながら飲む酒が好きなんですよ。

 一人でいるときは一滴も飲まないし、今では晩酌もノンアルコールビールを1本だけ。現役時代でも遠征先の部屋の冷蔵庫は開けたことがなかったし。門限を破ったことはあったけどね。

 門限破りのペナルティーで、よく覚えているのは根本(陸夫)監督時代の強制送還かな。根本さんというよりコーチをしていた広岡(達郎)さんが厳しくてね。

 東京遠征の巨人戦でしたよ。神田だったか浅草だったか。旅館へ戻ったのが深夜。裏口はあったけど、表玄関から堂々と入ったら見つかってね。3連戦の1試合を残して広島へ帰らされて1週間の自宅謹慎。

 その前の長谷川(良平監督)さんのころも寮に門限があってよく破ったもんだけど、当時はおおらかな時代でね。適当というか。でも広岡さんは違ったね。

 昔はビールに始まって水割りか炭酸割りのウイスキー、そしてブランデーをストレートで。口にするのはブランデーが多かったかな。今は焼酎が好きだね。でも一人では飲まないね。

 痛風の薬は今でも飲んでますよ。絶対に治らん病気らしいからね。あれは痛かった。

 (1969年の春季)キャンプインしたばかりで、宿舎に着いてマージャンをしていたら、足の親指の付け根が重く感じてきてね。そのうちにすごく痛みだして。オープン戦までには痛みが和らいでいたから開幕投手を務めることはできたけど、漢方薬代が高くついたなあ。

 これは暴飲暴食というより偏食が原因。僕は魚があまり好きじゃなく、肉ばかり食べていた。しかも朝から。野菜も食べないんで栄養が偏っていたんでしょう。

 コーチ時代にはよく選手を連れて出歩いた。メンバーは川口、川端、清川、津田、長冨らが多かったかな。みんな歌もうまくてね。

 いつだったか。知り合いが経営している店へ行って、ホステスさんの代わりに選手たちがホスト役になって、お客さんの相手をやったことがあった。

 (この件に関しては、かつて川端順氏が“客を相手に機転を利かす応接力はマウンドでも役に立つ”と安仁屋さんから説明を受けたと語っていた)

 根性をつけるためにいいと思ってね。まあ相手のお客さんもほとんどが知り合いだったから。

 僕にお金がないときはアイツらが出し合って「きょうは僕らが接待します」と言って連れて行ってくれたもんですよ。楽しかったね。ホント、彼らも楽しかったんじゃないかな。

 皆でワーワーやって、それで友達もたくさんできた。酒で迷惑をかけたことは一度もないし、いい酒を飲んでいたから翌日に残ることもなかったね。酒は百薬の長と言うじゃないですか。百害の長みたいな人も中にはいたけど。

 今は飲みに出ない選手が多いらしいね。僕に言わせると寂しい限り。せめて優勝の美酒ぐらいは…存分に味わってもらいたいね。

 ◇安仁屋 宗八(あにや・そうはち)1944年8月17日生まれ。沖縄県出身。沖縄高(現沖縄尚学)のエースで62年夏に甲子園出場。琉球煙草を経て64年広島に入団。75年阪神に移籍し、同年に最優秀防御率とカムバック賞を受賞。80年に広島へ復帰し、81年引退。実働18年、通算655試合登板、119勝124敗22セーブ。引退後は広島の投手コーチ、2軍監督などを歴任。2013年12月から広島カープOB会長。22年から名誉会長。

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