楽天移籍の栗原が歩む復活ロード

 古巣との対決実現を胸に、復活への道を描く男がいる。昨季限りで広島を退団し、楽天に移籍した栗原健太内野手(34)だ。3月下旬に右ふくらはぎを肉離れし、開幕を2軍で迎えたが、12日のイースタン・DeNA戦(泉)で約2カ月ぶりに実戦復帰。31日から開幕する交流戦期間中の1軍昇格に、照準を合わせている。

 故郷・東北で再起をかけるべく歩み出した矢先、故障に見舞われた。実戦に戻るまでに約2カ月を要したが、久々の打席に、栗原は充実の表情を浮かべていた。目の前には、具体的な目標が近づいている。31日からは交流戦が始まり、6月10~12日には広島戦(コボスタ宮城)が控えている。「そこで上がれたらいいですよね」。昨オフの楽天入団以来、「頑張っている姿を見せることが、恩返しになると思っています」と古巣への思いを話していた栗原は、モチベーションを一層高めた。

 今春のキャンプでは、若手に混じり、練習後は納得いくまでバットを振り続けた。球場を後にするのは、決まって最終組。豊富な練習量で知られる広島で主砲にまで上り詰めた男にとって、それは当然のことだった。「自分も若いころ、前田(智徳)さんや、緒方(孝市、現広島監督)さんたちがものすごく練習していたのを見てきましたから」。周囲からオーバーワークを心配されることもあったが、16年間のプロ生活で体に染み込んだスタイルは、新天地でも変わることはなかった。

 故障に見舞われた2軍暮らしの中でも、栗原は自身の流儀を貫いていた。朝6時半には、練習場に到着。合宿所で食事を仕込む料理長よりも早い出勤は、当然メンバーの中でも一番乗り。今年1月で34歳になったベテランの早朝始動に、若い選手たちから「早すぎです」と苦笑いされるほどだった。

 「朝10時に練習が始まるとしたら、そのときには万全の状態で体を動かせるようになっていないといけないんです」。練習時間から逆算すれば、栗原にとって早すぎる時間でも何でもなかった。むしろ“適正時刻”。誰もいない2軍施設で、ひとり本を読みながら、痛めたふくらはぎをお湯でじっくり温めた。

 そして、こんな話をした。日本代表として招集された09年WBCでのこと。強烈に印象に残ったのは、ロッカーが隣だったイチローの姿だった。イチローといえば、試合前の徹底したルーティンがよく知られているが、「見ていたら、すべての行動が、本当に毎日同じでした。ドリンクを飲む時間も、前の日とまったく同じでした」。普段はなかなか見ることのできない超一流プレーヤーの、その厳密に自己管理されたルーティンを目の当たりにして、準備時間の大切さをあらためて認識したのだという。そこで学んだスピリットは、復活に挑む今、まさに生かされている。

 「準備からが野球で、試合はその一部。そして試合ではほんの4、5打席しかない。その1打席、1打席が自分には勝負になりますから」。プロ17年目の栗原は、自らに言い聞かせるように話した。(デイリースポーツ・福岡香奈)

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