石川に感謝されたパネル
【9月2日】
現役時代の青木宣親から写真パネルを頼まれたことがある。ヤクルトがオリックスとの日本リーズを制した21年、冬のことだ。どんな写真を?なるほど、それは確かにいい写真だ。
「もし良ければ、2枚、お願いできませんか?」
聞けば、石川雅規も欲しがっているのだとか…。お安いご用です。
ほっともっとフィールド神戸で日本一になった瞬間、ベンチから青木と石川が涙して歓喜の輪に加わるシーン。見ているこちらもジーンときたことを覚えている。当欄に掲載したその写真をパネルにして宅配便でヤクルトのクラブハウスへ送ったると、青木からすごく丁寧なお礼があった。
「玄関に飾らせてもらいました。もう一人のオジサンも喜んでました。本当にありがとうございました」
石川からはキャンプ中に直接お礼があった。これだけ喜んでもらうと、こちらもうれしくなる…
あれから5年経った。この日、球界最年長の46歳が都内のヤクルト球団事務所で会見し、今季限りの引退を表明した。同席したのは、今年から球団のGMに就いた青木である。
石川「何か残しましたか?自分?」 青木GM「たくさん残しましたよ」
石川「色んなものにアンテナを張りながら挑戦していくのは青木GMもそうですが、色んな先輩から教わってきた。そういったものは残せた…受け継ぐことはできたかなかと思います」
色んなものにアンテナを張ってチャレンジする…それだけ聞けば、プロなんだからフツーじゃねえかと思われそうだが、これってなかなかできない。年齢を重ねればなおさら難しくなる。でも、青木や石川はそれを厭わなかった。彼らがレジェンドの域に達した理由の一つは、アンテナの向く先を限定しなかったこと。自分よりキャリアの浅い、実績のない選手であっても、その彼らが取り組んでいるものに興味が向かえば情報感度を高める。取り入れてみる。この謙虚さが成績を伸ばし、選手寿命も延ばす。そう感じる。
さて、この夜のタイガースはそんなレジェンドを敬う山野太一にやられた格好だ。お立ち台で「石川さん、やりました!」と叫ぶ山野はかわいらしくもあったが、当欄は、その左腕から唯一タイムリーを放った森下翔太を称えておきたい。三回2死満塁。フルカウントからあの厳しい内角スライダーをファウルにしてからのワンシームを右へ…その森下の技量に感動した。負けてもこれだけは書いておく。
「石川引退」を惜しむ神宮のスタンドには「19」のユニホーム、フラッグがあちこちで揺れていた。「19」といえば…ありがとう。敗れてもマジックが減れば悪い気はしないし、負けても輝弾が増えれば満更でもない。
「負けはしましたけど、あす非常に前向きに挑戦できるような…」
指揮官球児のこのコメントを聞けばなおさら、いい朝を迎えられそう。過去にないものを「残す」ために9月を歩む。その先にこの写真パネルのような感涙があると信じて。=敬称略=
