「嫌われる勇気」再び

 【9月25日】

 西宮ガーデンズの書店が好きでよく立ち寄る。この日も甲子園の帰りにぷらっと…いやもう最近は店頭に「阪神優勝コーナー」が設けられ、虎、虎、虎…何冊あんねんというくらい並ぶ。

 わざわざ本屋でシゴト(阪神)関連を手に取ることはない。お目当ては平積みされている新刊のハードカバーである。毎度名だたる作家のそれが目に入るのだけど、ロングセラーもやっぱり気になる。基本的に自己啓発系は読まないんだけど、しかし、この一冊は息が長い。ガーデンズでもまだゴールデンゾーンに並べてあった。

 『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)

 実はこれ、完読して当欄でも軽めに紹介したことがある。初版は13年。僕がまだ虎番の時代に買ってみた。自己啓発読んどるやん…そう、あのころはまあまあ好きだった。

 「ネタバレ」を記すつもりはない。なぜこの本に目がいったかといえば、球界のニュースを目にしたからだ。

 カープ新井監督、続投-。

 実は、最近よく後輩記者や球界の関係者からこんなふうに聞かれていた。

 「新井さん、やめないですかね…」

 2年連続Bクラスだからそんな声も当然出てくる。だが、カープ球団はそもそも3年で退陣させるつもりなら新井に託さなかったと思う。松田元(はじめ)オーナーは政権4年目へ向け、「絶対に成果を出してくれると思っている」と語ったそうだが、これは間違いなく本心。まずもって、新井貴浩はカープ球団にとってかけがえのない人材であり、彼なら必ず指導者として花を咲かせてくれるという僕らには想像できないほどの期待感があると聞く。

 それを知ったうえで書く。来季は阪神と優勝を争い、セ・リーグを盛り上げてもらいたい思いを込めて…。

 どんどん嫌われればいい-。

 何書いてんの?と言われてもいいんだけど、そう感じる。「新井さんを嫌いな人なんていないでしょ」と、各方面で度々耳にしてきた。その通りだと思う。でも、だからこそ心配だった。

 それはそうと、前述の本、冒頭はちょっと小難しい。フロイト、ユングと並ぶ心理学の巨頭A・アドラーの思想を綴る…といえば硬そうだけど、対話形式だからどんどん引き込まれる。嫌われる勇気を持てば幸せになれますよ…なんて単純なものではない。

 「仕事の本質は、他者への貢献」

 僕はこの項にうならされた。

 シゴトって誰のためにやるのか?

 自分のために決まっている。自分が稼ぎたいからやる。でも、アドラーはその本質は他者貢献にあるという。つまり「誰かのため」にやるのだ、と。いやいや、そんなの偽善でしょ。自分が汗をかいて成果をあげれば給料が上がる。昇進レースに勝てる。もてはやされる。球界なら王様に…。みんな仕事は自分のためにやるのだ。でも「指導者・新井」はそうなりきれないのでは…これが僕の勝手な懸念だった。だって他者貢献を地でいく人だから…。この続きは近いうちに新井に直接聞いて書きたい。=敬称略=

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