ウォークマンだけです

 【1月7日】

 全国高校サッカー選手権の準決勝は見応え十分だった。阪神監督の岡田彰布も駅伝など冬の学生スポーツが好きでよく見るそうだけど、国立競技場の熱戦2試合はテレビでご覧になっただろうか。

 準々決勝で王者青森山田を撃破した神村学園(鹿児島)はPK戦で岡山学芸館に敗れた。神村はドイツ1部ボルシアMGに入団内定する背番号13、福田師王(ふくだ・しおう)を擁しながら悲願ならず…。が、この世代のNo.1は何が凄いって、およそ高校生とは思えない「悟りぶり」がハンパない。3年間の集大成、それが夢の国立であっても達観の雰囲気が出まくっている。そこが夢の半分にも満たない場所だからか。緊張とは無縁のポーカーフェースなのだ。

 そして、もう一試合。僕が注目したのは決勝へ進出した東山(京都)の背番号13。左サイドを何度も仕掛け、大津(熊本)を脅かしたMF清水楓之介(しみず・ふうのすけ)である。彼は兵庫西宮出身(大社中学)。センアーノ神戸という名門クラブで育ち、僕の家族と少し縁があってずっと応援してきた。福田と同じく彼もこの大舞台を気負いなく駆け回った。

 近頃の若者のメンタルはどうなっているのか。彼らがまた何年後かのW杯で国民を歓喜させ、新しい景色の英雄になるのだろう。

 さて、我らがタイガースの若者はどうか。

 ドラ1森下翔太らルーキー7選手が入寮を済ませ、いよいよ新人合同自主トレがスタートする。メディア注目の中で夢への一歩を踏み出すわけだけど、僕はひとりひとりの雰囲気、取材に応じる顔つきをじかに見てみたい。

 プロの世界に飛び込んだばかりの新人でありながら、周囲を達観する選手はやはり際立つ。

 思い出すのは、鳥谷敬である。

 あれは04年の1月だから、鳥谷のルーキーイヤーはもう19年も前の話になる。

 自分は自分ですが、何か?

 どれだけ多くのカメラに囲まれても、22歳の顔にはいつもそう書いてあった。出世部屋でガッツポーズを決めてほしい。そんなメディアのリクエストにニコリともしなかったのが背番号1だった。

 そういえば、当時取材で驚いたのは、入寮した鳥谷に「部屋に持ち込んだもの」を聞いたときだ。

 「テレビ?ないです。なかったらなかったで生活していけるかなと思うので。(電化製品は)ウォークマンだけ。ジャージとかタオルとか、必要最低限のものだけあればいいです」

 ウォークマン…時代を感じるがそれにしても、鳥谷は最初テレビすら「要らない」というストイックさでメディアを驚かせた。

 ちなみに、今年のルーキーを含め、現在「虎風荘」入寮選手は計23名。聞けば、全員、部屋にテレビはあるという。(当然だ。ぜひテレビくらい見てください)。

 因みに鳥谷は新聞記事も「見ない」と言っていた。何を聞いても顔つきが変わらない。目が泳がない。彼はもう活躍の予感しかしなかった。懐かしい…。=敬称略=

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