リバウンドメンタリティー

 【12月7日】

 契約更改はいよいよ大詰めで、この日は選手会長の近本光司が契約書にサインした。6日は大山悠輔が更改し、大トリは飛躍を遂げるあの選手??夢のある増額を勝ち取るか、楽しみに待ちたい。

 ドラフト1位入団で期待を背に年々昇給する選手もいれば、下位入団の逆境をはね返し億を稼ぐようになる選手もいる。一流と呼ばれる者のプロセスは様々だ。

 人は「ドラマティック」が好きだから、青柳晃洋のようにドラフト5位からエースに上りつめるストーリーに勇気をもらう。

 俺だってできる。みんな、夢をみる。でも、無情にも大半はできない。多くの者の夢が夢で終わる現実がプロの世界にある。乗り越えられない壁があるのだ。

 夢といえば、日本サッカーの夢は、夢のまま4年後へ向かうことになった。この1カ月ほど、サッカー担当時代の人脈を通じ、現地カタールの様子を探り、当欄にサッカー用語を並べてきた。野球原稿に馴染みのないフレーズもちょくちょく交えながら…。

 「コスタリカ戦で負けてから凄い厳しい3日間を過ごしたんですけど、それでも、みんなでこの壁を乗り越えて、リバウンドメンタリティーを発揮して、強い気持ちで臨めた結果です」

 スペイン戦勝利のあと、ブラボー長友佑都はそう語っていた。

 リバウンド・メンタリティー。

訳せば、逆境をはね返す精神力…といったところか。

 何年か前、5代目のJリーグチェアマン村井満がその聞き慣れない横文字を使い、「一流の条件」を語っていたことがある。

 概してプロスポーツにおいては秀でた「心・技・体」が一流の条件だといわれる。が、元リクルート社長の村井は、前職の経験を交え調査したところ、そのいずれとも「相関はない」というのだ。

 じゃ、何が相関するのか。

 「傾聴力」と「主張力」だと仰る。

 村井いわく、前提として、サッカーは理不尽なスポーツである、と。つまり、必ずしも公平でない監督の起用方針や、自身の過失でないケガやミス。これら思わぬ挫折を乗り越えるために必要なことは、周囲の意見に耳を傾ける「傾聴力」と自身をアピールする「主張力」であると強調し、「海外のクラブで活躍する選手は、これを繰り返す能力が非常に高い選手たちです」。日本のサッカー教育では、技術やフィジカルを高めるトレーニングは進化しても、傾聴力や自己主張力を高めるトレーニングはなかった。前チェアマンはそんな主張を聞かせてくれたのだ。

 なんや、特別な話ちゃうやん。簡単やん。そう思われる読者もいるかもしれない。でも、どうだろう。例えば傾聴力…周囲の意見を素直に聞き入れる行為は、プロの選手、とりわけ実績のある選手にとって簡単なものではない。正しいと信じる方法で今まで成功してきた者は、思わぬ挫折や壁が目の前に現れたとき、すぐ他人の意見に耳を傾けるだろうか。

 続きは次回。=敬称略=

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