球宴ジャックを励みに

 【6月28日】

 タイガース勢の球宴ジャックは心地よい。オッサン記者の感覚としては03年のそれと似ている。初戦のスタメンはズラリとタテジマ…壮観だった。あの景色をまた見られると思うとゾクゾクする。

 僕が取材したオールスターといえば、いろんな思い出があるけれど、なかなか当時は書けなかった…というより、知らなかったので書けなかった内幕がまたドラマチックだったりする。

 そんななか、金本知憲が、中日監督としてベンチに座っていた落合博満と打撃談議をしたことはよく記事に書かせてもらった。落合の著書を読みあさるなど、その打撃理論を手本にしていた金本にとってこんな機会はない。試合後の舌鼓よりも、オレ流指導。喜んで食いつき、身ぶりを交えた手ほどきを受けたこともよくあった。

 落合の俗にいう神主打法と、虎党もよく知る金本打法。似ても似つかぬように映るけれど、金本は「すごく参考にしたよ」と、現役時代よく話していた。

 今年もし佐藤輝明が同じようなエピソード…まぁ、コロナ禍だから例年のようなものは難しいかもしれないが、想像もつかないような「絡み」…そんな裏ネタがあれば、リアルタイムは無理だとしても、後に綴れるような取材をしてみたいと思っている。

 ルーキーながらショートでファン投票1位の中野拓夢は立派というしかないけれど、個人的には、やっぱり梅野隆太郎。3度目の選出、しかも「侍ジャパン」の肩書きがついているので誇らしい。

 捕手といえば、思い出すのが13年のオールスターだ。この年は阪神の藤井彰人が初出場を決めた宴で、僕は藤井と阿部慎之助の「絡み」を見るのが楽しみだった。

 阿部は出場10度目の常連。藤井は阿部より歳上だけど、ベンチの中で何やら色々お伺いする風情だった。レギュラーシーズンで一塁を守ることもある阿部に藤井彰はこんな質問をぶつけていた。

 「試合に出ていて、キャッチャーのしんどさが『10』だったら、

ファーストはどれくらい?」

 すると、阿部は答えた。

 「『1』ないですね…」

 一塁軽視…なんてハナシでは決してなく、それくらい捕手業は辛い仕事だということを強調したかったのだと思う。

 藤井彰は「そうか…。やっぱりキャッチャーっていろいろあってしんどいよな」と笑ったそうだ。

 捕手の辛さはもちろん捕手にしか分からない。阿部の〈名言〉を聞けば、なおさら梅ちゃんの激務ははかり知れないものである。

 「まずはいろんな選手と話をしたいなと思ってます」。そう語る梅野にとって代表としての前取材も貴重だ。侍仲間との予行演習はなまなましいやりとりになる。

 さて、きょうからヤクルト戦。 正念場がないと面白くない。戦っている現場には申し訳ないけれど僕はそう思っている。「強い巨人なら意識する」。前監督の金本がそう語っていた通り追撃のGを抑えてこそ。球宴「大量」選出を励みに踏ん張りたい。=敬称略=

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