9打席連続は打てない

 【6月24日】

 終わってみれば快勝である。ただ、前カード巨人戦は2つ目、3つ目を落としただけに、ナゴヤの2戦目の流れを考えれば、僕は少し心配していた。その不安を拭ってくれたのが糸原健斗だった。

 J・ガンケルの快投を見れば、先に2点取れば…そんな試合だった。勝利打点は先制犠飛の中野拓夢についたけれど、殊勲打賞なんてものがあれば、四回に適時二塁打を放った糸原にあげたい。

 いらんこと書くなよ…糸原がもし、きのうの当欄を読んでいたらそう思ったかもしれない。

 「(中日戦の)3戦目の糸原に期待する」なんて、確かに余計なくだり。要らん圧。でも、それは「願掛け」でもあったもので…。

 大山悠輔が気付いていたかどうか分からないけれど、大山のルーキー時代、僕は彼に本塁打を打って欲しいときによく書いた。「打て!悠輔」。これが怖いくらい当たっちゃって、球団幹部から「もっと書いてくださいよ」とお願いされたりもした。だから、きのうの当欄で締めに書いてみた。照準を糸原に定め、意図的に…。

 さて、きのうの続きである。

 糸原の高校時代のハナシだけど例えば…佐藤輝明は小学生時分タイガースジュニアの一員だった。毎冬開催される「NPB12球団ジュニアトーナメント」に出場する為に選ばれし、関西、岡山等から集まる小学生のプロ予備軍だ。

 だから、サトテルが仁川学院時代は無名で甲子園にも縁が無かった…といえども、あのジュニアチームに選ばれたことを思えば、やはり10代から並みのポテンシャルでなかったことは想像できる。

 10代の糸原を語れば、「最初はまったく目立たなかった子」と平岡洋二は述懐する。くどいようだが、平岡といえば金本知憲、新井貴浩らをトレーニング指導し、糸原を開星高校時代から知る人だ。

 「1年秋の中国大会で9打席連続ヒットを打ったんだよ。当時、開星の1年生も全員指導していたんだけど、あの大会まで糸原という1年生を認識してなかった…。

『え?あれ、誰?』って感じ」

 実は、前監督の金本知憲が16年秋のドラフトでENEOSの内野手に興味を持ち、平岡にポテンシャルを確かめたことがあった。

 「強いよ」

 平岡は金本に伝えた。

 何が強いか。

 体の強さ。筋力の強さである。

 金本がトレーニング指導者の平岡に聞きたかったのは、ずばり、そこである。開星入学当初「並」だった筋力は2年冬にグンと成長し、高校生の平均よりもかなりいい数値が出るようになった。

 「反応が良い選手だった」

 平岡はそう伝えながら、もう一つ「推薦」する裏付けは…。

 「広島、岡山…あのあたりの強豪が集まってくる大会で9打席連続ヒットはなかなか打てない。筋力はもちろんだけど、糸原には天性の野球センス、勝負強さを感じたから推したんだよ」

 体が強い。勝負に強い。糸原もまた10代からプロへ導かれる大物だったということだ。=敬称略=

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