今年4度のスカウト会議

 【6月17日】

 阪神前オーナー坂井信也と会う機会があった。場所は大阪。しっかり感染対策をしながら話をさせてもらった。時期は伏せるが、こちらが昔話を持ちかけたものだから、長い取材になってしまった。

 実は、前総帥にぜひ聞きたいことがあった。「取材が鉄則」の当欄だからある程度その真実を知ったつもりでいたけれど、総責任者に直球でぶつけてみたかった。

 5年前のドラフトで、なぜ、大山悠輔を1位指名したのか-。

 そう聞けば、坂井前オーナーは笑っていた。もちろん、すべて話せないことは承知している。でもできれば正確に知りたい。正確に伝えたい。だから、聞いてみた。

 「あのドラフトが始まるちょうど一年くらい前からずっと、右打ちの野手がほしいと思っていたんです。来年、誰かいい右打者はいないかなと…。そうしたら、あのときは左(打者)ばかりだったんです。京田くんでしょ、吉川くんでしょ、石井くん…みんな左打ちの内野手ばかりでした。そんな中で、白鴎大学に大山という選手がいる。大学日本代表の4番を打つ大山という選手が…。その年の指名選手を見てもらったら分かりますけど、大学生でドラフトにかかった選手はその4人しかいなかった。右打ちは大山くんだけ…」

 確かにそう。京田陽太(中日2位=日大)、吉川尚輝(巨人1位=中京学院大)、石井一成(日本ハム2位=早大)そして、社会人の源田壮亮(西武3位=トヨタ自動車)…確かに、16年秋のドラフトで上位指名された野手は左打ちばかりだった…。 

 なぜ、このタイミングでドラフトの話を綴るのか。

 リーグ戦再開へ選手たちが調整を続ける一方で、矢野虎を支える数々のセクションも〈動脈〉を止めることはない。そんな交流戦ブレークに於いて、紙面の端っこで「秋の戦い」に触れたかった。

 秋といえば、日本シリーズ…もちろん、そこへ向かう旅路に注目しながら歩んでいくわけだけど、もう一つの戦い、ドラフトのドラマを書きたかった。

 佐藤輝明、中野拓夢、伊藤将司…彼ら20年秋のドラフト組が今シーズンの躍進を支えていることは明らかである。球団史上、新人がこれだけ「即」戦力になることはなかった。「即」戦力になり得る意義を考えるからこそ、「秋の戦い」へ向け、そこに携わるスタッフは日々休まらないのだ。

 取材の限り、阪神のスカウト会議は今年既に「4度」行われている。6月でこの回数は多くも少なくもなく通常運転。ただ、今年のドラフト会議は例年より早く10月11日の開催。こちらも少々早く取材を進めなければならないと思っている。

 今年4度のスカウト会議を僕は取材できていない。阪神は今秋のドラフトで、どんな青写真を描いているのか。それくらい知っておきたいところだけれど、まだ…。

 坂井前オーナーは僕に言った。

 「5年前のドラフトは、本当に金本さんの英断でした」

 続きは次回。=敬称略=

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