ロハスJr.は拝み取る

 【5月8日】

 なんでもない飛球を拝み取り…右翼で初スタメンの新助っ人メル・ロハス・ジュニアである。デビュー戦。しかも慣れないスタジアム。丁寧にいって当然…そんな見方もあるけれど、どうだろう。

 取材規制がなければ、そのあたり本人に直に聞いてみたいところだけど、今は叶わない。

 昨年韓国KTで47本塁打、135打点を記録し、シーズンMVPに輝いた大砲だけど、彼のキャリアで興味深いのは、韓国リーグで19年、20年と2年連続ゴールデングラブ賞を受賞したこと。これは楽しみだし、横浜でその片鱗を見せてもらえれば、左中間の膨らみが大きな甲子園で楽しみが増えるというもの。だから、この日のデビュー戦も、当欄は打撃より守備にスポットをあててみた。

 八回守備からベンチへ退いたので、注目は七回まで。打者ごとの守備位置やバックアップなど、モニター観戦のため、全てを見られたわけではないが、できる限り目を凝らしてみた。

 守備機会は計3度。飛球は2つあったけれど、いずれもハマスタ上空の風は穏やかだった。

 最初は二回裏。先頭N・ソトが打ち損じた飛球はほぼ右翼の定位置。3歩、4歩、前進し、それでもロハスは拝み取った。

 次の飛球は四回。宮崎敏郎が打ち上げた打球は、これもほぼ定位置。目測を誤ったのか、それとも予想外の軌道だったのか、最後はおっとっと…ここでも拝み取りで苦笑いを浮かべていた。

 ロハスの阪神入団が決まってすぐ、彼の韓国時代のプレー集を見たことを思い出した。いま一度、確かめてみると、昨季の守備動画では右翼で8つの飛球中2度、拝み取りをしている。「拝むように両手を前に合わせボールを取ること」と広辞苑にあるように、安全第一の捕球スタイルだが、昔、カープからメッツへ移籍した外野手T・ペレスに聞いたことがある。

 ペレスもメジャー在籍時代、平凡に見える飛球をよく拝み取りしていた。彼は「アメリカでは打球の質もちょっと違うし、シカゴとか風が強い球場もあって見た目より難しいフライが多いんだよ」と教えてくれたけれど、確かに、メジャーリーグの取材で、ほぼ定位置の飛球を拝み取りする選手を何度も見掛けたものだ。

 繰り返すが、この日、ロハスのもとへボールが飛んだ際、バックスクリーンの球団旗は垂れ下がっていた。無風…それでも、丁寧に安全に、優しく捕った。理由を聞きたかったけれど…何だかワケもなく好感をもって見てしまった。

 ロハスといえば阪神移籍を決めたインタビューで虎党の心をわし掴みにした発言が忘れられない。

 「東京は本当にステキでジャイアンツは日本のヤンキースのようなものです。しかし、阪神はより家族に優しい都市(西宮市)に拠点を置いています」

 オレは、阪神で、甲子園で、成功したいんだ…心優しい男からそう聞こえてきそうなデビュー戦。勝手にそう思いながら新助っ人の拝み取りを眺めた。=敬称略=

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