「45分の30」という歴史

 【4月27日】

 早いな…。こんなに試合が早く終わると書き手は慌ただしい。佐藤輝明が沢村賞投手をいきなり仕留めたんだからネタはできたようなものじゃないか。確かにそうだけど、ワッショイとはいかない。

 速いな…。こんなに近本光司のスライディングが速いと、審判団のVTR検証も慌ただしくなる。えらく時間がかかったけれど、スロー映像を見る限り微妙だった。

 角度によっては京田陽太のタッチよりも早く近本の足がベースに入ったようにも見える。1点を追う八回である。2死から相手失策で出た走者が走る。勇気あるスタートだっただけに、判定をいえばキリがないんだけど、悔しい。

 ナゴヤドームでは勝てないだとか、名古屋は鬼門だとか…。阪神に携わる者は名古屋を悪く言い過ぎるきらいがある(僕もだけど)ので、今年はそういう書き方をなるべく避けるシーズンにしたい。

 確かに、僕が虎番だった頃はナゴヤドームで勝てなかった。97年の開場から昨季までの勝率は・358しかない。3タテをくらった夜は憂鬱で、まずい酒を飲んだものだ。でも待てよ。今まで調べたことがなかったんだけど、ナゴヤドーム以前はどうだったんだ?

 果たしてナゴヤ球場でも阪神は分が悪かったのだろうか。

 僕がデイリースポーツに入社したのは1995年だから、96年限りで1軍本拠地としての役目を終えたナゴヤ球場で取材したのは2シーズンだけ。ナゴヤが鬼門だったかどうかなんて、当時は考える余裕もなかった。

 「えっと…いや、やっぱりあまり勝てなかったようですね…」

 本紙の記録部員に確かめてみると、フランチャイズ制が導入された52年以降、96年まで、ナゴヤ球場で阪神が中日に勝ち越したのは14回。一度だけ五分のシーズンがあったけれど、45シーズンで負け越しが30回もあった。いや…だからこそ歴史を変えていきたい。

 というか、気になる。

 さすがに優勝したシーズンはナゴヤでも強かったはずだ。

 62年=6勝7敗1分け

 64年=11勝3敗

 85年=7勝4敗

 03年=4勝8敗

 05年=6勝5敗 

 そうか。03年Vの星野阪神がナゴヤドームだけ苦しんだことはよく覚えている。05年も勝ち越しは一つ。王者になったシーズンも、このドームはラクな球場ではなかったのだ。

 なんとか風向きを変えたいバンテリンドームの初年度だけど、その初戦の得点は二回の一発のみ。それ以外のイニングは二塁さえ踏めなかった。今季初勝利の大野はお立ち台で語っていた。

 「正直、あそこでセーフになったらキツかった。あれが勝因」と近本の盗塁を刺した捕手・木下拓哉の肩を称えた。

 勝ち越し、負け越しの記録だけ振り返っても分からないだけで、過去もナゴヤで「紙一重の負け」が結構あったのだと思う。今年はそんな星を白にできれば…。=敬称略=

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