新人監督V藤川阪神のウラ側 「森下、佐藤輝」分岐点は4・15ヤクルト戦 「チャレンジ枠」で活気
阪神が2年ぶり7度目のセ・リーグ制覇を達成した。就任1年目の藤川球児監督(45)が成し遂げた球団史上初となる新人監督V。NPB史上最速で歓喜のゴールを迎えた藤川野球を連載「球児虎 火の玉V 凡事徹底の裏側」でひもとく。第1回は破壊力抜群のクリーンアップや若手起用に着目した攻撃面に迫った。
◇ ◇
二塁に到達した佐藤輝が両拳を握り、雄たけびを上げる。その瞬間、ベンチの藤川監督も同じポーズを決めていた。8月1日・ヤクルト戦(神宮)は延長十回に、佐藤輝の決勝打で勝ち越し。今季のチーム一丸ぶりを象徴するシーンとなった。
開幕前日、藤川監督がキーマンに指名したのが佐藤輝だった。春先からアーチを量産。プロ5年目の覚醒は本物だ。不動の4番として本塁打、打点部門でトップを走り、堂々のMVP筆頭候補だ。
得点数437はリーグトップで、チーム打率・245は1位に僅差の3位。振り返れば、藤川監督の早い決断が奏功した形だ。開幕の4番は森下だった。だが、打率・235、佐藤輝も同・191と低空飛行を続け、チームも勝率5割といまいち波に乗りきれない中、開幕14試合目。4月15日のヤクルト戦(松山)から「3番・森下、4番・佐藤輝」の並びに変更。この夜、森下が3安打すると、続く17日の同戦(神宮)で佐藤輝が5号2ラン。新打順で2人が息を吹き返した。
小谷野打撃チーフコーチは「初回から左3人(近本、中野、佐藤輝)で行くのか、全体的に9回攻撃するにあたってどちらの方が年間通してうまくいくかを考えた」と話す。投手コーチの意見も参考にし、「あそこが変わってハマったのかな」と勝因に挙げる。指揮官が「打線の核」として絶大な信頼を寄せる5番・大山の勝負強さは健在。打点トップ3を虎のクリーンアップが独占している。
もちろん、チャンスメーク力も大きい。1番・近本は最多安打を争い、昨季の不振から復活を遂げた中野はつなぎ役に徹し、犠打数41はリーグ断トツだ。正捕手を奪った坂本の打力アップも見逃せない。規定打席未到達ながら出塁率・360は出色だ。好不調の波を6人で補いながら、安定した結果につなげていった。
固定メンバーで戦うだけでない。遊撃は小幡が手中に収めたように見えたが、後半戦に入り熊谷が攻守に躍動。リーグ優勝を決めた一戦では木浪も存在感を示した。左翼には「チャレンジ枠」を設けることで、競争が生まれた。2軍ともきっちり連携して、状態を把握。平田2軍監督は「藤川監督とはしょっちゅうメールのやりとりや電話して、藤本コーチとも話はするし。使い時のタイミングを計って上げてくれてる」とホットラインを明かす。
春季キャンプMVPに輝いた高卒5年目・高寺がセンスあふれる打撃で出場機会を大幅に増やし、同4年目・中川もパンチ力でアピール。2軍暮らしが長かった小野寺にも出番が訪れている。藤本総合コーチは「選手が目の色を変えてやってくれている。チャンスが絶対来ると信じてファームでやってくれていた」とうなずく。新戦力の台頭はチーム全体に活気を生む。“球児流”の切磋琢磨(せっさたくま)によって、戦力層は確実に底上げされた。(デイリースポーツ阪神取材班)
関連ニュース





