阪神・青柳 エースの進化を見た“魂の109球” 5・6中日・大野雄との壮絶投手戦

 143試合のペナントレースにおいて、デイリースポーツ記者の心に残った試合、場面を振り返るオフ企画『一投一打』。阪神担当の斉藤章平記者は、阪神・青柳晃洋投手(28)が見せた“魂の109球”を振り返る。5月6日の中日戦で、十回2死まで完全投球を続けた中日・大野雄との投げ合いに感じた、右腕の進化を記した。

  ◇  ◇

 手に汗握る、緊迫した、そして壮絶な投手戦だった。5月6日の中日戦(バンテリン)。十回2死まで完全投球を続けた大野雄に対し、青柳も一歩も引かない好投。スタメンに左打者6人を並べてきた相手打線を九回終了まで散発2安打無失点と抑え込んでいた。エース同士の意地のぶつかり合いは、シーズン終盤の優勝が懸かった試合でもないのに見る者の感動を呼んだ。

 ポイントはいくつもあった。九回表2死から青柳が27人目の打者として打席に立つと、敵地の竜党からも大きな拍手が湧き起こった。何とか自らのバットでチーム最初の「H」ランプをともそうと、大野雄の直球に必死に食らい付く姿勢が胸に響いた。

 そして0-0のまま迎えた十回裏、悲劇的な結末が待っていた。1死満塁、石川昂の打球は無情にも前進守備の二遊間を抜けていった。5安打1失点の熱投は白星で報われず、今季初黒星を喫した。仲間に肩をたたかれながら、三塁ベンチに引き揚げる背番号50の背中も涙を誘った。

 極め付きは試合後のコメントだ。「十回を任せてもらえたのに、簡単にサヨナラ負けを食らった。情けない」と最初に自らを責めた上で「また0点に抑えるように頑張るしかない」と悔しさをにじませながら前を向いた。

 私は5月1日から阪神取材班に戻ったばかりだった。2016年以来で同年の青柳は1軍、2軍を行ったり来たりしながら先発で4勝(5敗)を挙げたドラフト5位ルーキーだった。昨年13勝を挙げ、日本球界のエースへの階段を着実に上っているのは数字で分かっていたが、まさに百聞は一見にしかず。6年間の進化を“魂の109球”で存分に見せられた一戦だった。

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