【密着仕事人】左手人さし指は勲章「ほぼ死んでいます」片山ブルペン捕手

 藤川(左)と話をする片山ブルペン捕手(撮影・山口登)
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 阪神は日々、各地で熱戦を繰り広げている。その舞台裏では多くの人が汗を流し、チームを支えている。裏方の仕事にスポットを当てる企画「密着仕事人」。阪神・片山大樹ブルペン捕手(44)は2001年から同職に就き、日々猛虎の投手陣を陰ながら支えている。モットーや、やりがい、優勝への熱い思いを明かしてくれた。

 典型的な裏方稼業と言っていいだろうか。片山ブルペン捕手は自身の左手の人さし指を見ながら、柔和な笑みを浮かべた。

 「ほぼ死んでいますね(笑い)。これでご飯を食べているようなもの。この1本でね」。今季でブルペン捕手19年目。人さし指は太く腫れ上がり、「冬は冷たくなる」と笑うほど感覚はない。阪神の投手陣を支え続けてきた男の“勲章”だ。

 92年度ドラフト4位でプロ入りするも1軍出場機会はなかった。00年に現役引退。「きれいな言い方をすれば、現役8年間チームに貢献できなかった。ここからは働かないとアカンという気持ちで入ったのは覚えています」。翌年から現職を務めている。

 春季キャンプでは1日の大半をブルペンで過ごす。シーズンでは正午頃に球場入りし、1日約200球を受ける。試合前は先発投手のブルペン投球を受け、試合中はブルペンで中継ぎ投手の準備をサポートする。

 「選手から聞かれたら自分の思っていることを伝えるだけ。聞かれないのに『ここはこうだよ』とかは言わない。僕はピッチャーのいい時の状態を頭に入れている。それが悪くなってきたら『いい時はこうだったよ』と」

 若い頃、ブルペンでは皆が先輩だった。だが、自分が年上となり、現在の投手陣は若手の台頭が目立つ。「僕に言いづらいこともあると思う。そういうのをなくして『大樹さんお願いします』と来る。そういうのを大事にしたい。積極的に若い子と話をして、たまにはご飯に行ったり」。細やかな気配りで信頼関係を構築している。

 捕球時に声を出すのが自身のスタイル。その原点は、意外なものだった。「18歳の頃、キャッチングがめちゃくちゃ下手くそで、(捕球時に)パス、パス言っていて。恥ずかしいから最初、『パチン』って(声に出して)言っていた。そこから癖になって」

 00年の日米野球には、ブルペン捕手として参加。志願してダイヤモンドバックスなどで活躍したランディ・ジョンソンの球を受けた。捕球の度に「オイ」と声を出し、左腕から「『サンキュー、ミスター・ホイ』って言われてね(笑い)」。何物にも代えがたい経験は貴重な財産として胸にしまっている。

 やりがいを感じるのは、球を受けた投手がマウンドで輝く瞬間。「自分が(球を)受けてグラウンドに出したピッチャーが活躍するのが一番うれしい。全員が全員、活躍できるわけではないけど、精いっぱい僕らもサポートできたら。(投手の)全員が活躍してくれればいい」。自然と口調は熱を帯びた。

 「優勝しないとダメやと思っていますね。優勝したい。僕らも一緒に戦っていると思っている。何とかいい結果が残せるように、どれだけ手伝いができるか」。長年の経験を伝え、選手とともに悲願へ歩んでいく。

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