「練習試合、阪神５－２楽天」（１４日、かりゆしホテルズボールパーク宜野座）

　先輩の意地を見せた。阪神のドラフト１位・近本光司外野手（２４）＝大阪ガス＝が楽天との練習試合（宜野座）に「９番・中堅」で先発出場。社高の後輩で楽天ドラフト１位・辰己（立命大）の前で“プロ初”の三塁打をマークするなど、３打数２安打１打点と大暴れ。初の対外試合で、虎の韋駄天（いだてん）が存在感を示した。

　後輩よ、見ていろ－。そう言わんばかりに近本は快音と快足を披露した。初の対外試合となった楽天戦に先発出場。楽天の「６番・右翼」で出場した社高の後輩・辰己の目の前で、３打数２安打１打点と活躍し、先輩としての威厳を示した。

　あいさつ代わりの一打は、先頭で迎えた三回の第１打席。カウント１－１から池田が投じた３球目、真ん中寄りの真っすぐをコンパクトなスイングでバットの芯に乗せた。中前打。投球に逆らわないお手本のような打撃だった。

　「コースに逆らわずに自分の打撃で打ち返すことができた」

　圧巻だったのは、七回１死二塁。３番手・西口の配球心理を読んだ。前打者の坂本が変化球を中前へ運んでいたこともあり、初球の直球に狙いを定めた。読み通り、１４１キロのストレートを迷わずフルスイング。鋭いライナー性の打球が左中間を真っ二つに破り、快足を飛ばして悠々と三塁を陥れた。

　プロ初となった三塁打と適時打。紅白戦を含めれば、３試合連続安打と結果を残す。矢野監督は「近本らしい打撃と足を見せてくれた。打撃は本当に自分の形が崩れない」と絶賛。浜中打撃コーチも「逆方向にも強い打球が打てる。ポテンシャルが高い」と目を細めた。

　存在感を示した虎のドラ１。一方で楽天のドラ１は４打数無安打２三振と振るわなかった。高校の先輩後輩という関係だけでなく、チームとしても縁がある。ドラフト会議では、阪神からも指名された辰己。４球団競合の末に楽天が交渉権を獲得し、その後に指名されたのが近本だった。

　試合後には、会話を交わした両者。「あいつもあいつらしく、自分の考えをもっているので。体もだいぶ大きくなっていましたし、打撃も変わっていた。ケガなくやってほしい」と背番号５は後輩を思いやった。

　もちろん先輩にも課題はある。先頭で出塁した三回、二盗を試みたが失敗。指揮官は「ナイストライ」と積極姿勢を評価したが、近本は「スタートが悪かったのと、二塁手とかぶってしまいスライディングを緩めてしまった」と反省した。

　目先の結果よりもここからが大切。「走攻守全部のレベルアップ。自分の形で自分のやりたいことをしっかりやってきたい」。少しずつ、着実に目標の場所へ前進を続けている。