「阪神１－０ヤクルト」（３１日、甲子園球場）

　技ありの一打で勝利に導いた。阪神唯一の得点をたたき出したのは鳥谷。通算２０００安打まで残り「８」とする中前適時打で秋山の力投に応えた。

　投手戦が繰り広げられる中、好機で打席に立ったベテランが一振りで決めた。０－０の四回１死一、二塁。初球の内角直球に反応した。「いいところに飛んでくれた」と詰まりながらも中前へ。二走の福留を本塁へ迎え入れた。

　「ピッチャーが頑張ってくれているので」と自身の安打には触れることなく、クールに振り返る。虎党の声援を大歓声に変えた。また一段、レジェンドへの階段を上がった。

　着実にカウントダウンを進める鳥谷に対して「いいところでたくさん打ってほしいですね」と期待を込めた指揮官。ベテランが打てばチームの空気も変わる。それだけに優勝争いを演じる中、価値ある１本を積み重ねていくよう求めた。

　試合前練習には珍しい光景があった。ティー打撃を行う森越に歩み寄ると、そのまま指導。身ぶり手ぶりでアドバイスを送った。グラウンドなど、人目に付く場所で公開指導することはほとんどない。大記録目前でも平常心だ。チームのことを第一に考えシーズンを送っている。さあ、頂点へ。この男のバットがさらに火を噴く。