良太が燃えた逆転V打!プロ初4安打

 「中日2‐7阪神」(23日、ナゴド)

 絶対、負けられん。阪神・新井良は血相を変えて打席に立った。それでも、力みを抑え「何とかバットに当てようと思った」。カウント2‐2から真ん中の速球をこん身のスイングではじき返した。打球は背走する和田の頭上を越え、左翼フェンスまで転々。三塁からマートンが同点の生還、二塁から福留が勝ち越しのホームを踏んだ。二塁に達した良太は右拳を3度、力強く突き上げた。

 「皆が熱い気持ちでやっていた。それがあのビッグイニングにつながったと思う」。三回で和田監督がグラウンドを去った。試合後、特別な意識を問われると「それは皆」と冷静に語ったが、期する思いはあった。「俺たち和田チルドレンだもんな」。いつしか、これが大和との合言葉になっていた。先発布陣に名を連ねるようになったのは和田阪神1年目。指揮官の期待を背負うからこそ、申し子として成長を誓う。大和は20日のDeNA戦で死球を受け、出場選手登録を抹消された。大和の分も…言葉にはしないが、最終決着まで覇権争いに加わる覚悟だ。

 1週間遅れのメモリアルだった。16日に30歳の誕生日を迎えた。昨季の記念日は、横浜で8号バースデーアーチを含む2安打1打点の活躍で自らを祝った。しかし、今年は同日のヤクルト戦で先発出場を坂に譲り、最後まで出番なし。開幕を4番で迎えたファイターが、静かな夜を過ごした。

 現在、12本塁打。2本差で兄貴浩を追っている。兄弟でチーム内の本塁打争いをする。これほどの親孝行はない。1983年夏。当時7歳の兄貴浩は、良太の誕生をはっきりと記憶している。「赤ん坊の良太が病院から戻ってきた日はよく覚えている。おふくろと二人で布団で寝ていた記憶もある。子供心に自分に弟ができたことが、すごくうれしかった」。兄弟で歓喜を。兄はそれを「ひとつの夢」と話す。

 九回に4安打目を中前へ運んだ。1試合4安打はプロ8年目で初体験。特別な夜になった。古巣の本拠で浴びた大歓声は、どんなバースデーソングよりも励みになる。

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